行政対象暴力がクローズアップされる端緒となった「鹿沼事件」。遺体なき殺人事件として話題を集めたが、本著は事件の真相究明のレベルを超え、行政が抱える潜在的な問題点をもあぶりだす。結論は比較的よく言われていることなので新鮮味はないが、実際に起きた事案を基に書かれているため非常にリアリティーがある。
取材班による約一年間にわたる事件の追跡取材は多数の障壁に遭遇している様子がよく読み取れる。それでも一定の結論を導き出しているのは「さすが地元メディア!」と思う。大手紙やテレビはこれほどまでに時間と労力を費やすことができるだろうか。地元紙の真骨頂を見た。