ぼくらはその1球にかけた
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それは一本の電話から始まった。
〝ぼく〟は記憶を辿る旅に出た。
やってきたのは小学生の頃の記憶。オジサンと野球場に行ったあの日の記憶だった。全てが上手く回っていたような気がする当時。あの頃のぼくにはぼくの、オジサンにはオジサンの、身の丈にあった悩みや葛藤があった。
野球場に響く金属バットの音。スローモーションで一塁ベースを駆け抜ける打者。振りかぶり、捕手の構えるミット目がけて硬球を投げ込む投手。空は晴れ渡り、青は暑気で白く濁っている。記憶は現実との間を行き来し、現在のぼくの感情は、その狭間を彷徨う旅人となった。
家から歩いて15分の駅までの、ショートトリップ。〝ぼく〟はアナタに会って、話をしたかった。