実利と歴史ロマンを兼ね合わせた良書
★★★★★
英語は混血語であり、歴史的経緯、特にドイツ語やフランス語との関わりから英文法を見るという視点は重要である。日本語の場合、例えば、漢字の音読みは中国語由来であり、訓読みは日本語本来の読み方である。大きく分けて2つの系統がある。そういうことを知っていることは重要であり、これは英語にも当てはまる。英語の単語は、7〜8割がフランス語を中心とするラテン語系ともいわれる(アルクのサイトの松澤喜好監修『語源学習法』の「第66話 英語とフランス語の共通点」参照)。したがって、フランス語を知っている人には、英語の学習は断然有利である(英語のうち、どの部分がフランス語由来か検討を付けやすい)。逆も然り。香港出身の元同僚(広東語と北京語を話す。その他に英語と日本語も)によると、日本語の漢字も、音読みは中国人にはなじみやすいようだ。逆に、日本人が中国語を勉強するときも、音読みから類推するという手はある程度は使えるのかもしれない。
著者が教えている高校生の場合は、普通最初に英語を習うので、フランス語から英語を見るという視点を適用するのは難しい。ただ、本書には、ドイツ語やフランス語との関わり以外のことも多く書いてあるので、英語の変遷を学ぶ中で、丸暗記でない理詰めの知識が得られる。
とにかく良書である。地方の高校教師の方がこんなに頑張っておられる姿にも勇気付けられる。
英文法の深い疑問をスッキリできる
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日本語の「貴様」は昔は漢字の通り相手を敬う言葉であったが、現代では大変無礼な意味に変遷して使用されている。
英語も日本語同様、意味用法が変遷し続けているため、単純な直訳どおりには使えなくなっており、ゆえに英会話、英作文の際にすんなり言葉が出なかったり、間違った使い方をしてしまう。
例えば”a good 10 days”は「たっぷり10日」という意味であるが、「一つの」という意味が主である”a”を付けるのを忘れてたりする。
そもそもなぜ複数形のdaysに”a”を付けるのか疑問に思いつつも、そういうものとして覚えるしかなかったし、学校でもそこまで深い点を教わることがなかったからだ。
我々日本人の多くが「貴様」という言葉がなぜ無礼な言葉に変遷していったのかを知らないのと同じように、おそらくネイティブでも知らないような疑問点は多々ある。
しかし本書ではその辺の疑問点を、表現の誕生から変遷の経緯まで著者独自の解釈も交えつつ説明してくれていて、スッキリと解決できる。
機械的に覚えて使って身に付けるよりも、時間が掛かっても深く理解して身に付けたほうが英会話や英作文のミスも減らせ、語学力も一層上達すると思う。
文法の本ではないみたい
★★★★☆
英語文法の本と思って読むと、少し違うような気がします。どちらかというと英語史の本という感じです。私にとっては少し、予想外でした。読み物として読むなら面白いと思いますが、これで英文法を学ぼうというものではないような気がします。
スッキリ!
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中学1年生のとき、英語教師に「英語はなんでそうなるの?という理由はなくて、そうなっているからそうなっているとして習うもの」と言われました。しかたないので、そういった態度で学習しましたが(おかげで英語は嫌いでしたが)、この本を読むと「もっと早くこの本に出会いたかった」と思いました。筆者は新潟県の高校教師だそうですが、こんな先生に教えてもらえる高校生は幸せだと思います。
英語の歴史、そして、英語に対してドイツ語やフランス語などがどのように影響してきたか・・・を解き明かしていくことにより、いままでのもやもやしたものが文字通り「氷解」しました。たとえば、「宇宙」には、space,universe,cosmosという3つの対応単語がありますが、これらはどういう意図で使い分けられるのか・・・のみならず、なぜこのように同じような意味の単語が存在しているのか・・を「歴史」に基づいて説明しています。
英語が苦手な人でも嫌いな人でも、この本は楽しめると思います。元ネタ本はいろいろあるのだと思いますが、とても読みやすくまとめられています。
大変為になる一冊だった
★★★★★
この本の17章「〜ing語尾とその周辺」は興味深く読ませてもらった。分詞構文を導く
〜ingは動名詞に由来するという新しい考え方に感動すら覚えた。生徒にただ分詞構文
の〜ingと丸暗記させるのではなく、今後はこの本の考え方に基づいて分詞構文の〜ingを
説明してみたいと思う。この本で、英語、さらには言語の奥深さを学んだ気がした。