『詐欺とペテンの大百科』は、人がなぜだまし、だまされ続けるかという永遠のテーマに迫る古典である。初版は1996年に出され、本書はその新装版にあたる。
本書は、社会学や犯罪心理学などの参考図書として使われている信頼ある書であり、事例の中には、まだ一般に知られていない恐るべき手口も数多く収められている。ビジネスに関連するものが多いが、それ以外にも歴史のウソ、芸術品の贋作、化石の捏造など、さまざまなトピックを扱っている。
ここで紹介されている事例は、すべて過去に実際に起こったものであり、今日行われている手口のもととなっているものばかりである。中には、そのまま使われ、今なお通用している手口もあるから驚きである。その一例は下のとおり。
- 自分の精子だけを使い、医者が精子バンクを経営する。
- 自分が万引きしたように見せかけ、デパートから謝罪と示談金を引き出す。
- 200人のリストの中から100人に「株が上がる」、残り100人に「株が下がる」と電話をかけ、次に当たった人の100人の中から同様に50人に絞り込む。残った50人はこのインチキ投資予想家を信用して大金を預ける。もちろん、その金は持ち逃げされ、戻ってこない。
- 架空の都市計画の話を広めて土地価格を高騰させ、自分は売り逃げる。
本書はまた、詐欺とペテンの歴史書として読んでもおもしろい。伝説の詐欺師チャールス・ポンジをはじめ、さまざまな詐欺師のエピソードは、まるで物語のように読者を楽しませてくれる。(土井英司)