気候危機は、ときにはゆっくりと起きているかのように思えるかもしれないが、実際は急速にすすんでおり、地球規模の緊急事態となっている。漢字で表す危機は、最初の文字は危険の危、2文字目は機会の機だ。私たちに忍び寄り、進み続けている危険に立ち向かうためには、まず、私たちが危機に面しているのだということに気づかなければならない。では、なぜ私たちのリーダーは甲高く鳴り響く警報が聞こえないのだろう? それを認めた瞬間、道徳的に避けることのできない行動を取らなければならなくなるのを知って、真実を拒絶しているのだろうか。そうなのかもしれないが、見ていないからといって、不都合な真実は消えてはくれない。それどころか、応答すればその重要性は減るどころか、増していくのだ。
かけがえのない地球
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昨今話題の地球温暖化には賛否両論あるところだが、本書によれば科学者の間ではコンセンサスがあり、
様々な懐疑や論争は故意に操作されたデマだという。地球温暖化という「不都合な真実」とその対策法を一貫して主張する本書は、
米クリントン政権2期8年に副大統領を勤め上げ、もう少しで大統領になるところだったアル・ゴア氏の著作。
大統領選後、ゴアは世界中をまわって、環境問題についてのプレゼンを行っており、本書はその内容をもとに書籍にまとまったものである。
読みやすく大きい文字と豊富なカラー写真・グラフのおかげで、非常に明快で読みやすい洋書。英文も大体において平易で、親しみやすい。
大学の授業で大気中の二酸化炭素量について学び、以来環境問題に深い関心を持ち、時には実地に赴いて学んできたゴア。
この本では科学調査のグラフや自然の写真などを豊富に用いながら、何十万年単位で見ても自然の変動の範囲内からは大きく逸れるCO2増加があること、
大気中のCO2量と気温には密接な関係があること、氷河が消失し池が蒸発しハリケーンが巨大化・強力化していること、干ばつと洪水が併行すること、
永久凍土が溶けて被害が出ていること、海水が酸化し珊瑚が死んでいること、蚊の移動などで伝染病の危険が広がっていること等を次々に示す。
そして、こうした気候変動の結果、海面上昇によって夥しい数の難民が出うること、海流が変わり「温暖化」のはずが欧州が極寒になりうること、
動物の絶滅を招くこと、氷河の消失により長江やガンジス川などの大河川への水供給が滞り世界の人口の4割が水不足に苦しみうることを示す。
「温暖化は神話だ」「温暖化してるかもしれないけど、人間のせいじゃない」等の反対意見についてのゴアの指摘は以下のようである。
専門家の間で温暖化は事実として一致して認識されているにも関わらず、それを認めてしまうと一部の企業には不都合なので、
ブッシュ政権に指名された人が検閲などを行ったり、専門家自らが後になって訂正した古い昔の意見などを都合よく引用したりして、
学術雑誌の論文では意見の一致があるのに新聞など一般メディアでは意見が分かれているという事態を招いているというのである。
著者の、前ブッシュ政権への厳しい批判もこうして随所に織り込まれている。温暖化対策など積極的にしないブッシュ政権を、
僅差で敗れたゴアは歯がゆくて堪らない思いで見続けてきたのであろう。
グラフ、図版や写真、明晰な文章でわかりやすく論を進めながら随所に家族の事など個人的なエピソードを挿入し、
最後は米国の持てるポテンシャルに訴えて感動的に終わらせるという効果的な構成は、さすが演説がうまい米国の大物政治家である。
巻末に、個々人として何ができるかが具体的に述べられ、ヒントになるウェブサイトも紹介されている。
感服
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地球温暖化を、politicalでもenvironmentalでもなくMORAL issue であると位置づける本書の序文に感銘を受けて、一気に読みきってしまった。
オールカラーで、美しい地球や枯れゆく植物の写真が多くのっている。その写真だけからでも、地球をいつくしむ気持ちが湧いてくる。そのほかにも、グラフ等非常にわかりやすい。
本書な、地球的な規模の問題を扱っていながら、自伝的な、とてもパーソナルな本でもある。著者の、どうして自分が地球温暖化を問題視しているか、どのように取り組みはじめ、活動を継続しているのかという個人の体験とそこにある"Aha" momentを通して、読者にも目覚めてほしいという姿勢がとてもすばらしい。
ぜひ多くの人に読んでもらいたい本
★★★★★
素晴らしい本ですね。
ぜひ、多くの人に読んでもらたい本です。
まず、何よりも、収録されている写真/図表がこの「不都合な」現実をよく伝えています。
データに基づく説明は好感が持てます。
もうひとつ、いいのは、決して悲観主義に陥っていないこと。
問題の大きさに、ついつい個人レベルでは無力感を感じてしまいがちですが、この本の後半には、みんなで力を合わせて、地球を救おうという熱いメッセージがこめられています。
著者のゴア氏は、大学時代に早くから環境問題に取り組んだ教授について学んだそうです。
このテーマについては、いわば、筋金入りの闘士ですね。
ご承知のように、ゴア氏はアメリカの副大統領も勤めた政治家です。
政治家の書く本と言うと、つい胡散臭いものを思い浮かべてしまいますが、この本からはむしろゴア氏本人の誠実さがしっかり伝わってきます。
特に、家族について書いたコラムは涙ものですね。
こういった政治家らしからぬところも、この本の魅力でしょう。
ちなみに、英文は平易で、読みやすいものです。英語の勉強にもなります。
かつての副大統領ゴアの信念
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元アメリカ合衆国副大統領 アル・ゴア長年に亘る人間の地球環境に与えてきた影響”温暖化”の実態に対する警鐘のプレゼンテーションの材料を元に書かれた本書は彼の”子供の時代に対する我々の責任”という信念が随所に垣間見えます。
息子の事故を契機にその思いを強くしたというエピソードも説得力があります。
美しいグラフや写真は家族と一緒に眺めるのに最適です。
地球、人間そして家族についての深い洞察を伴った良書だと思います。