本書は、今までの CG 教科書には無かったであろう、クヌースの提唱する文芸的プログラミングのスタイルを取っている点が他書との大きな違いである。
多くの CG~~ 教科書では、実際のプログラムの仕方ではなく理論を主に説明している。そのため、それらの教科書を元に実際にレンダラをプログラム言語で書こうとしたときに、ハタとどうプログラムを組めばよいか戸惑ってしまう。
それに対し本書では、理論を説明すると同時に、その C++~~ 言語による実装も示すようになっている。理論やプログラムの実装はステップバイステップ形式でやさしくしっかりと行なわれる。最後まで読めば、レンダラプログラム一式が完成しレンダリングの知識も身に付く、という仕組みである。もちろん付録 CD~~ にはすでに完成形のプログラムソースコードが収録されている。
本書で取り扱っている内容は、基礎的なレイトレーシングから、近年のレンダリング手法の主流であるフォトンマッピングやパストレーシングなどの光の物理的な振る舞いを正確に取り扱うアルゴリズムまで、広範囲に渡っている。
本書は英語であるが、内容はやさしく図も豊富であるので、理解~~するのはそれほど困難ではないだろう。
映画や TV などに用いられている写実的な 3D CG~~ レンダリング画像を、最終的に自分の書いたプログラムで作成することができるようになるのを思えば、本書で理論とプログラムを学ぶ楽しみが自然と湧いてくるであろう。
これからレンダラを勉強したい・書いてみたいという初心者にオススメである。また、中級者・上級者には今一度自分の知識やプログラムをレビューし、復習しなおすのにも役に立つだろう。~