名著「三経義疏」から
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聖徳太子の撰と伝えられる『三経義疏』…「法華経義疏」「勝鬘経義疏」「維摩経義疏」のうち「法華経」以外の二書を解読・解説したものである。お経そのものをこんなに懇切丁寧に分かりやすく説いてくれた書はそう多くあるまい。
「勝鬘経義疏」は勝鬘夫人を主人公としている。勝鬘経とは、在家の仏教信者・勝鬘夫人の説法を褒め称え、彼女の言葉を補った教えである。本経の説く如来像思想は、人間の思想と実践に関する哲学的・宗教的探求の究極のものと言われてきた。
「心の過悪と、および身の四種とを降伏して、すでに難伏地に到りたまえり。是の故に、法王を礼したてまつる」(勝鬘経義疏)
「維摩経義疏」は維摩詰という在家の富豪を主人公としている。「衆生が病むかぎり私も病み続ける」という大乗仏教の慈悲による病にかかっている。維摩は空や無執着など、大乗仏教の重要な思想を説示していく。在家の日常生活に活かす方法が模索されている。
「そもそも女人の性は楽しむことを美しとしている。もしも法の楽しみを明かして、それによって女人の五欲の楽しみに代えてやるのでなければ、おそらくは五欲の楽しみを忘れがたいであろう(維摩経義疏)