Keynesに興味が沸き原書に興味がある方は結論部分を
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John Maynard Keynesが当時の古典経済学を例外的な条件でのみ成り立つ特殊な理論と考え、より普遍的な考え方として提案した「一般理論」の原書です。大恐慌以来の世界不況に直面し各国政府の役割が見直されている中(2009年)、原点に帰るつもりで読んでみました。難点は当時と現在で言葉(用語)が違うことです。用語や概念が確立されていなかった当時の状況を反映している訳ですが、 概念から定義するのでまどろっこしく、また現在と違う言い回しも多く紛らわしくもあり、残念ながら気軽に読めるものではありませんでした。もしKeynesに興味が沸き原書が読みたくなったら第4巻22章〜24章までの一般理論から導かれる結論部分の一読をお勧めします。景気循環、経済の経路依存性、資産効果・大衆心理と行動経済学、市場の欠陥、国際分業の効果と保護主義への警笛、ビジネスの人の欲望の捌け口としての役割(ビジネスは人生ゲーム)、需要調整のための政府の役割と個人主義との兼ね合い。これら現在でも重要な議論への洞察は流石です。最近、行動経済学の分野で取り上げられた「血気」(Animal Spirits)は第12章「長期的な展望」に言及があります。事業は必然的に社会全体に貢献する。社会から血気が失われ、自然発生的な楽観主義が行き詰るとき、事業は衰え滅び行く。それ故、経済的繁栄は政治・社会の雰囲気に大いに依存する。耳が痛い指摘です。
変なケインズ解説書を読むなら原著を読め
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20世紀最大の経済学者の一人であるケインズの主著である「一般理論」であるが、今般の経済を考える上で、この原著を読むことによりよりよい考えが得ることは間違いないであろう。なぜなら、ケインズの部分を引用して誤ったケインズ理論を勉強する上でも読むことをお奨めします。今、有象無象の経済学者やもどきにも騙されないためにも読みましょう。
人間の心理から考察するマクロ経済学
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本書では雇用量の決定のメカニズムが分析されている.本書によれば,①消費性向と,②資本の限界効率,③流動性選好という3つの要因によって雇用量は決定される.その中でも題名にあるように,利子と貨幣の問題が関係する資本の限界効率と流動性選好に関する分析が徹底的に行われている.これらの要因を重点的に考察することによって,貨幣経済における経済問題の特徴をより明確することができたのが本書の大きな貢献であろう.また,上にあげた3つの要因はすべて人間の心理を対象としており,そこからマクロ経済のメカニズムを描き出しているところに筆者の偉大さを感じることができる.