「そう、そう」と「へえ〜」
★★★★★
松下幸之助くらいの人になってしまうと、
おそらく、どんな言葉を吐いても、
それは「成功の法則」となってしまう、
そんな気はする。
それでも、ページをめくってみれば、
いろいろな言葉が現れてくる。
たとえば、成功の秘訣を問われて、
「雨が降れば傘をさす、ということですわ」
と答える。
禅問答のような言葉だが、
ようは、必要なときに必要なことをできる、
つまり、
ふだんから、気働きができている、
ということだろう。
この本を読んで、
「そう、そう」と思えれば、
気働きができている、
「へえ〜」と思うということは、
そういった局面での気働きがもうひとつ、
といった感じではないだろうか。
松下幸之助翁という、
一時代を創った人を地図として、
自分のありかたを考えるのに
ちょうどいい本だとおもう。
おじいちゃん社長(幸之助氏)にじーんときました。
★★★★★
私は、戦後すぐの成功者たちに対して、
「チャンスがある時代だったんじゃないの?」
と、冷ややかに見ているところがありました。
「社会システムが複雑になった、現代とは違う!」と……。
でも、この本を読んだら、自分の考え方が間違っていたことに気づきました。
「きみの声を聞きたかったんや」などの温かい言葉の数々。
80歳過ぎた幸之助氏がベッドから起き上がって、部下を見送るエピソード。
大成功者でありながら、相手の地位に関わらず、耳を傾ける謙虚な姿勢。
本当に学ぶべき部分がたくさんあります。
この本を読んだからといって、明日から使えるノウハウは手に入りません。
でも、今日から生きていく上での「芯」みたいなものが見つかる気がしました。
今、心がささくれている方、
人生の指針を求めている若い人、
「今の世の中は、何か違うんじゃないか」と言葉にできない違和感を持っている人、
など、たくさんの人にお勧めしたい一冊です。
最後に。
幸之助氏に焦点を当てて読むのもいいのですが、
青年(著者・江口氏)の成長物語として読んでも楽しいです。
おじいちゃん社長(幸之助氏)の指示を一生懸命に自分なりに解釈しながら、
「ほめられたい!」と頑張る姿には、
ほほえましいものを感じます。