物語にも登場人物にも思い切り入れ込んで、先へ先へとぐいぐい引きずられて夢中で読んでしまう作品がある。そういう作品は大抵、他の追随を許さないような、主人公に圧倒的な魅力があるように思う。本作の主人公、メレディス王女もその一人だ。
妖精の国の王女として女王から帰還を許され、王位継承権まで手に入れたメレディスだが、彼女の王位を阻もうとあの手この手の罠にスプラッタと官能の嵐が吹き荒れる。メレディスは、女王の近衛兵達を護衛にあてがわれるが、女王の命令で動いていた近衛兵も、メレディスの外見の美しさやセクシーさだけではなく、パワーや鋭い観察力、政治力、大局を見据える王者としての風格の片鱗に首をたれ、アンシーリーコートには珍しい優しい気遣いに大いに惹きつけられる。また彼女は大変機知に飛んでおり、深刻な場面なのに思わずくすくす笑いをしたくなるような気の利いた一言を発して近衛兵をニヤリとさせたりもしていて楽しい。
このように魅力的な主人公が満身創痍になりながらも、美しく逞しい男達に身も心も愛撫されながら、守り守られる圧倒的エンターテイメントが本書である。息もつかせぬ怒涛の展開に、手に汗を握りながら、激しい恋のさやあてにドキドキを繰り返し、妖精世界の規律や価値観の人間との違いに一々驚きながら、めくるめく異世界探訪の旅を終えるのである。もう読者だってへとへとだ。ただし快い疲れなんである。

メリーは美しくて強く気高き王女。
父親と同じ魔力を身につけてからは闇と大気の女王の跡継ぎとして認められる。
そのメリー王女を守り、愛する男たち。
セクシーで強くてやはり美しい男たち。
彼らとメリーのやりとりは奔放でセクシーでドキドキした。
メリーは果たして女王になれるのか、
続きがとても気になる。

ただし、残念なのは、独特な舞台設定になれるのに時間がかかったこと。
物語は現代だけれども、妖精や魔術が当たり前のように共存していて、
妖精界は人間界と（まるで日本とアメリカに国交があるように）交流を持っている。
それぞれの外交官や大使館みたいな存在があって・・・。
妖精たちにもいろんな種類がいて。
そういうのに慣れないうちは、ちょっとわかり辛くて。
☆三つになりました。