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ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)

価格: ¥790
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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矜持 ★★★★★
何故、密貿易の女傑は巨漢の男たちに畏敬の念を抱かせ、女王とまで呼ばれていたのだろうか。

米軍の物資を掠めて商売をすることでアメリカの鼻を明かしていたことは事実であろうが、それはナツコに限ったことではないだろう。
密貿易に必要な度胸と情報収集力が人より優れていたことは間違いなさそうだが、それも永続的なものではないだろうし、それだけで畏敬の念まで抱かせることができるだろうか。

多分、彼女が沖縄の人の心をひきつけるのは、ウチナーとしての矜持ではないだろうか?この本を読むとそう思えてくる。彼女は、米国のお粗末な占領行政下では密貿易が沖縄経済に必要であったと認識していたのだ。そしてその必要性が時の経過とともに薄れていくことも。加えて、頑ななまでの貞操観念と母親としての倫理観。米兵への売春が横行していた当時の沖縄では、潔癖さがあって初めて「アメリカを手玉にとっている」と言えたのかもしれない。

「あとがき」にも記載されているが、敗戦国の史実は記録に残されないことが多い。人々の記憶の中にしか残っていなかった「ナツコ」を描いた本書はノンフィクションの枠を超えていて、戦後沖縄史における貴重な資料といってもいい位だ。
沖縄の表に現れない歴史や生活、人々 ★★★★☆
世の中の出来事の多くは、人知れず忘れ去られていくものかもしれません。
しかしながら、著者は、その中から素晴らしい評伝をすくい上げました。

取材対象が他界しているゆえに、取材は困難であったでしょうが、
ナツコのカリスマ性や、当時の歴史の裏側が、人間群像が、
迫力を持って伝わってきました。

地理的には、狭い範囲のことながら、歴史であることには間違いなく、
そのため事実関係の記録に、多くのページが割かれるところがあります。
その分、読み物としては、長い集中力を必要とするかもしれません。

最晩年(といっても40前)に、一人の母親に戻っていくナツコと娘たちの
交流は、胸に染み入ります。
潮気たっぷりの海の女の物語・・・ ★★★★★
 太平洋戦争前後の動乱期に、沖縄、八重山、フィリピン、台湾、香港、そして神戸を結ぶ海を駆け巡って生きた女性ナツコの物語です。
 ナツコと同時代を生きた人には大浦太郎、照屋敏子といった著名人もいますが、僕は本書を読んで初めてナツコが沖縄の人々の心に残したものの大きさを理解しました。
 国境を気にすることなく大海を渡って密貿易を行った、潮気あふれる海人そのものとも言えるナツコの爽快で清々しい生き様。しかし、その裏側に垣間見える母親としての苦悩。そして病との闘い…。
 決して「生き急ぎ」という言葉で片付けたくはないのですが、彗星のように時代を駆け抜けた彼女の人生には眩暈を伴うスピード感があります。
 本書はナツコの人生に仮託して沖縄の戦後史の一こまを描いたものですが、かなり読み応えがあります。
沖縄は「日本」か「東南アジア」か…戦後史を再検討する労作 ★★★★★
「沖縄密貿易の女王」というサブタイトルがついているが、
実は「夏子」が、いわば集団ヒステリー状態になって密貿易に関わっていた
「沖縄の戦後」の象徴的な存在だったことがわかる。

当時の沖縄は「貧しかったが夢があった」とも言う。
密貿易もまたその象徴だったのだろうか。
ナツコの人物像も魅力的だ。

沖縄――とくに八重山に行ったことがある人はわかると思うが、
文化圏は日本ではなく台湾や中国に近いものさえある。
その彼らが台湾や中国と交易することは、沖縄の人にしてみれば
「悪」ではなかったのだと思う。
とくに密貿易の中心地だった与那国島は、台湾から百キロ少しだ。

タイトルの割には「人物」より「戦後史」に力点が置かれている気もするが、
沖縄の戦後を再検討する力作だと思う。
戦後沖縄史を明らかにする労作 ★★★★☆
沖縄は旅行で出かけたことがあるが、本書に書かれているような
歴史についてはぜんぜん知らなかった。

だから興味深く読んだのだが、個人的にはもう少しナツコその人に
しぼった本だったらよかったのに、という印象を持った。

「歴史」に軸足を置くのか、「人物」に軸足を置くのか、これは
著者の関心のありようだから仕方がないが、私は沖縄の歴史をあまりに
こまかく追う記述が、ちょっと疲れた。