描いている途中の絵も美しい
★★★★★
見識の高い pict15 さんの素晴らしいレビューに付け加えることなどないのですが、 レビューを読んでこのサイトで彼のDVD(Watercolor Solutions のほうです)を探して見てみたら、pict15 さんのレビューのとおり、オフホワイトのエプロンが抽象画になってました(笑)。私のような素人が彼の作品を写真で見ると、一見ラフに描いているようにも見えるのですが、じつはかなり時間をかけて試行錯誤しながら描いていることがわかって興味深かったです。この本でもそうですが、描いている途中の絵でも、いつも美しいと思いました。
彼の技法書はどれも、内容が同じで表紙が違うだけのものが複数あったりするので、彼の名前や本のタイトルで検索して一番安いものを探すことをおすすめします。
カラーリスト、Charles Reid の花
★★★★☆
花と静物を中心にした技法書。静物などの影(投影の)はかなり色味を含ませ、描かれた静物が乾かないうちに筆を入れ溶け込ませていてそれを自然に見せている。スプラッタリング(散布)を多用するが、これが画面に動きを与える要素になっていると思う。描いている途中は無造作に見えるがこれも計算された「ずぼら」さであるようだ。イーゼルに40度くらいに傾けて制作しているが上下の筆のストロークは下から上に運ばれる。ひとつのストロークに濃淡による変化をつけるためだと思われるがこれは筆に含まれた絵の具と水分の適量を把握し熟知していなければ難しい。描く過程では散漫な描き方のように思えるが最後にはちゃんと花のボリューム感が出ているし彩度の高い色のコンポジションや微妙な中間色のコントロールも素晴らしい。彼の別の本で日本語に翻訳されている技法書があるがこれは印刷の発色が良くない。この書は英語版だが発色がかなり美しい。カラーリストである彼の魅力を十分引き出していると思う。それと完成作でも素描感を残しているのも魅力のひとつだと思う。
余談だが、彼のDVDを入手することが出来、それを見て面白かったのは、かなりせっかちな画家のようで、描く途中自分のシャツやジーンズで絵の具の着いた筆を頓着なく拭うし、室内でも筆を振り払い周囲に絵の具をまき散らす。この具象画家の衣服や室内は、抽象画そのものになっているに違いない。
中級者くらいで自分の絵はなにか硬いと思う方や、色使いに壁を感じているという方にもお薦めしたい技法書。少しでも壁を破ってくれるかも、・・・とは言っても私には彼のように出来そうにありませんがいくらか参考になれば。