いつも通り面白いのですが・・・・
★★★★☆
江戸庶民の話を書かせれば、めったに外さない山本一力作品。本作にも「様子がいい」「江戸っ子気質」の登場人物がたくさん登場します。筆者の長編は「泣き笑い」のうちなんとなく将来に希望を抱かせる、プチハッピーエンド的に終わるものが多いのですが、この作品は、後半で恋愛がかなりクローズアップされ、なおかつそれが現代小説と変わらないような展開を見せるので、江戸風味が多少薄れてしまうような感じがあります。
とはいえ、「水売り」というノスタルジックな商売といつもながらに「いい男」の主人公と個性的な脇役に囲まれた山本ワールドは健在で、読んで損はない小説です。
水のありがたみ
★★★★★
現代、蛇口をひねれば、家でも公園でも水を飲むことができ、うまい水はス-パ-やコンビニで手にはいる、しかし江戸時代の水は大変だった、売る方も買う方も、そんな話の中に、若者の純粋な恋物語がまざり、そして常連の江戸屋も登場と、最後は、一力節が冴え渡り、読み出したらたまらない作品です。
意外な結末
★★★★☆
江戸の深川を中心にした、今ではちょっと考えられない商売「水売り」の龍太郎が主人公。深川は井戸を掘っても塩水しか出てこない、さらに 大川を超えて水道が引けなかったと言うことで、生活に必要な飲み水を売る商売がこの「水売り」で、それを一生懸命に務めているのが龍太郎というお話です。任侠肌あり、大店の主人が出てきたり、蕎麦屋の家族との付き合いがあったり、ファンの方なら同じみの面々(前作までの登場人物)の名前も出てきます。
さて この時代の、それぞれの人たちの生き様がふんだんに描かれていて楽しかったのですが・・。一力ファンとしては、ちょっと驚きの結末です。これから読まれる方に、あまり内容を暴露すると楽しみが無くなりますので、これ以上は「読んでのお楽しみ」としておきますが、ちょっと気分の滅入っている時には、後回しにした方が良いかもしれません。