ハーバード・ライティング・センターの共同設立者でもある臨床心理学者として、ボルカーは100人のライターが論文を仕上げるのを手伝ってきた。本書では、毎日書かないと物足りなく感じるように、書き癖をつける方法を提案している。そして、やる気を失わないために手頃な目標や締め切りを設定する必要を強調している。 くわえて、スランプを避けるために、内面的にも外面的にもリラックスする方法も提案している。
さらにもっと重要なのは、指導教官の慎重な選び方といった、論文の執筆にまつわる厄介な問題についてのアドバイスだ。(たとえば、有名だがよそよそしい指導教官と、有名さでは劣るが君のために喜んで時間をとってくれる指導教官のどちらをとるか迫られたなら、ボルカーは「戦略的に有利だからと言って有名な方の教官を選べば、学位を取るのがおぼつかなくなるのだから、無駄なことは明らかです」とアドバイスしている)。本書には、指導教官にとって役立つ付記も盛りこまれていて、それは学生と指導教官がおたがいに期待するものを率直に語り合うための基本となりえる内容である。この優れた本を通じて、ボルカーはセラピストとチアリーダーと教練指導官をひとつにまとめたような役割を演じている。
また、本書のアドバイスには、論文執筆者以外の興味は引かない内容もある一方で、たとえばスランプについての記述など、書くことにかかわる者みんなに貴重な情報も数多くある。本書はすばらしい書き手になるためのルールを満載するのではなく、最も生産的に書ける手順を見つけることについて書かれている。一連の練習問題は、自分自身と自分の書き方をもっとよく知るのに利用できる。
本書に沿えば、ほんの少しでも書けるようになるはずだ。そして、それが何よりも大事なことだ。とくにスランプになったときには、ボルカーが言うように「なんでもいいから書きなさい。書かないことには何も始まらないのだから」役立つアドバイスと励ましの声に満ちた本書は、論文を書こうと考える者なら必ず読むべきだ。(C.B. Delaney, Amazon.com)