「本田神話(サーガ)」の最新作ってことで
★★★★★
本田氏がこの本を出すと聞いて正直、最初はピンと来なかった。
ぶっちゃけてしまえば「童話のパロディ」という企画自体は殊更目新しいものではなく、類似した本も今まで無数に出されて来たであろうからだ。
しかし読んでいて思ったのは、内容が「いつもの本田節」ということ、そしてそれが童話のキャラクターに「内面」を与える結果になっており、それこそが本田氏の意図するところだったのだな、という感想だ。
言うまでもなく普通、童話のキャラクターはあくまでストーリーを進めるための駒として用意され、そこに「内面」というものは全く描かれない。だからこそ人は童話を読み、そこに寓意を汲み取ったりフロイトやらユングやらの手法を援用して分析してみたりする。
しかし本田氏は童話のキャラに過剰なまでの「内面」を見出すことで、諸々の話を見事に「脱構築」(でいいのか、用法)している。それほどメジャーではない物語を引っ張り出して来て「異性装」や「寝取られ」といった萌えシチュエーションを見出しているのも面白いが、『ヘンゼルとグレーテル』など、本田氏が繰り返し繰り返し拘って来たモチーフ(「妹萌え」「親の虐待」)とぴたりと重なっていて、慄然とさせられる。
正直、「ちょっと外したかな」と思うネタもなくははいが、それを含めてやはりこれは、本田氏の壮大な実験の一端なのである。