では、ディスカッションに上達したいと考える読者とはどんな英語力を持っていると考えるべきでしょうか。中高生?いえ、どちらかといえば大学生や社会人であると考えるほうが自然です。英語の基本文法は既に修め、語彙も日常会話に不自由しない程度には有しているという読者です。
さて、本書はこのような読者が真に手にすべき書かというと、私はそうは思いません。
その理由のひとつは、本書で取り上げられている英語表現が、英語を学び始めたばかりの中学生向けと思われる基礎的なものが多いからです。
I’d like to see~.(~したい)(63頁)
That’s right. (その通り)(91頁)
I see.(なるほど)(99頁)
We need to ~. (~する必要があります)(179頁)
こうした表現をそれぞれわざわざ個別に項目立てして説明しているのは首を傾げます。今さら?という思いを抱くのは私だけではないと思います。英語ディスカッションに上達したいと考えるような読者なら、こうした表現は既に学校や他書で学んでいるはずでしょう。
本書を否定的に見る理由がもうひとつあります。
これだけの価格をつけるのならば付属CDがついても良いのではないかと思います。同程度の値段の類書でいえば、「ビジネスミーティングの英語表現」(ジャパンタイムズ ; ISBN: 4789010546)や「ビジネス交渉の英語」(ジャパンタイムズ ; ISBN: 4789010562)などが、こうしたテーマの書を探している読者の英語力と本の内容とが合致している上に、CDもついているので良いと思います。
ターゲットとなる読者の英語力と書の内容とをすり合わせることに思いが至っていない本だなと思いました。