日頃行う授業について、一つの方策を示した本
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カバー裏にはこんなことが書かれています。
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「学力差があるのだから習熟度別にするしかない」と言う前に、
授業設計の基本方針を見直してみませんか。
◎未習の基本事項は教師から共通に教える
◎子どもどうしの教え合いを通じて理解の確認をはかる
◎発展的課題の協同解決で理解を深める
◎自己評価として「わかったこと」「わからないこと」を書く
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昨今の教育現場、特に算数や数学の場面ではこんなことが言われていないでしょうか。
「教科書は閉じたまま、黒板の問題を見ましょう」とか、「指導」よりも「支援」だ、といったものです。
筆者はこの流れに疑問符を投げかけます。
塾に通っていたり、予習をしている子どもたちにとって、教科書にある問題を与えられ、
どのように解いたらよいのか、既習事項から類推する時間は、既に知っていることをなぞるだけで無駄な時間なのではないか。
また、学力が低い子にとっては、既習事項を習得していないため、類推などできないのではないか。
支援するだけに終始する「教えずに考えさせる授業」は通常の授業スタイルとしては無駄が多いのではないだろうか。
よって、筆者は「基礎基本は教える。そして理解度を確認して定着を図る。その後、ハイレベルな課題を与えるような流れを考えていけば、最低限の学力がつき、塾や予習を行っている子もますます知識理解を定着させ、深化することができる。」という
「教えて考えさせる授業」を提唱します。
最後には必ず、メタ認知の育成のために「わかったこと」と「わからないこと」を書かせるのも特徴と言えます。
おそらく、タイトルから考えるのは、教える=詰め込み教育 といった考え方かも知れませんが、決してそうではありませんでした。
この本には、例として
「割り算の筆算(十の位からの繰り下がりがある場合)」、「複合図形の面積」、「平行四辺形の面積」、
「かんなでの削り方の指導」、「順列・組み合わせ」などをどう扱うかについて、具体的な指導の流れを踏まえながら
教えて考えさせる授業の指導形態についてわかりやすく書いてあります。
私はこの本を見て、はじめは衝撃を受けました。私が行っていた授業はまさしく教えずに考えさせる授業であったからです。
この指導形態は、不確定要素が多く、うまくいく時は爆発的に意見が飛び出ますが、全く収穫が無いときもありました。
(これは指導形態だけの問題ではないとも同時に思います)
それを解決する一手段として、指導方法の見直しを行うとするなら、この本は誰しもが読むべき本だと思います。