診断の機能、面接の場の作り方、非言語的所見の重要性、「なぜ」という言葉の有害性、等々、面接の基礎をつくるヒントが多数盛り込まれている。「空疎な正論」は一切書かれていない。もちろんスポーツと同様にトレーニングしなければ身に付かないが。
大学の教官として在籍中に書かれたものだが、その趣はむしろ「職人」である。頭脳は優秀でも人の話を聞かない「医学者」ばかりの現状を憂う人は多いと思う。DSMで粗雑な思考になりつつある精神科医にあらためて著者の次の皮肉を噛みしめてもらいたい。「誤ったデータに基づき、正しい考察がなされるなら、必ず誤った判断に到達する」