茜の帳
価格: ¥0
☆本書の構成
創作時期と作品形式から、本書は三部構成となっている。
第一部に収めた「茜の帳」は、平成4年1月30日発行の個人誌『ハーモニー 10号』に発表した幻想小説。
「萬子媛抄」は、それの付録としたもので、小説の舞台のモデルとなった祐徳稲荷神社の創建者、萬子媛に関するエッセー。
第二部に収録した俳句も前掲の『ハーモニー』に発表したもので、祐徳稲荷神社に参詣したときに詠んだ句。
第三部には、ブログ「マダムNの覚書」に2012年から2013年にかけて公開した記事の中から萬子媛に関する記事を収録。
(目次)
本書について
第一部 小説・〔付録〕エッセー
・茜の帳
・萬子媛抄
第二部 俳句
第三部 ブログ「マダムNの覚書」からセレクトした記事
・祐徳稲荷神社 ①初詣
・祐徳稲荷神社 ②石の馬と「うま」くいく御守り
・祐徳稲荷神社 ③萬子媛ゆかりの石壁神社にて
・石の馬の夢
・不思議なこと
・萬子媛の美麗なオーラ
・同人雑誌と萬子媛のこと
・宗教の違いなんていうけれど……マグダラのマリア伝説と萬子媛
・萬子媛のお社
・母親として偉大だった萬子媛
あとがき
☆著者の言葉
わたしが子供の頃に子守の小母さんから子守唄代わりに聴かされた四方山話の中には、祐徳稲荷神社の創建者として知られる萬子媛にまつわる話がありました。
特に意識することがなかったにもかかわらず、萬子媛のことは人生の節目節目にあわく思い出されたものです。
やがて創作に没頭するようになったわたしは祐徳稲荷神社を小説の舞台のモデルとして、一編の幻想小説を書きました。
そして、最近のことですが、萬子媛のお社の前で、ある内的体験をもちました。
長年の神秘主義思想の研究を通して萬子媛を見つめた成果が当著となりました。
☆祐徳稲荷神社と萬子媛について
JR肥前鹿島駅から車で十分ほどの祐徳稲荷神社は商売の神さまとして知られ、正月には参拝客で賑わう。
祐徳稲荷神社は貞享四年(1687年)、鹿島鍋島藩主直朝公の継室(後妻)、萬子媛によって創建された。
御輿入れのとき、萬子媛は花山院家の庭に祀られていた伏見稲荷大神の分霊を父上から授けられたという。分霊は萬子媛の出家の際、城内の庭から尼寺祐徳院の庭内に移された。
萬子媛は僧侶となっていた義理の息子に指導を仰いで信仰生活に入り、それから19年、命の終わりを悟って寿蔵に入り、往生を遂げた。宝永二年(1705年)、享年80歳だった。
念仏の声は岩蓋を通して、一週間以上も聴こえたという。ここは萬子媛の諡「祐徳院殿瑞顔実麟大姉」から「祐徳院」と呼ばれて、祭神の稲荷神と共に信仰を集めるようになる。
その後、明治四年の神仏分離令により、仏教の行事は廃されて萬子媛に「萬媛命」の神号が贈られた。