現代語訳 修身要領 - 現代の日本に伝えたい慶應義塾、福澤諭吉の教え
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福澤諭吉という名前を聞いて多くの方が思い浮かべるのは、慶應義塾の創設者という教育家としてのイメージだと思われます。一万円札の肖像という身近な存在でもありますが、福澤諭吉が説いた考えの詳細については、あまりよく知らないという方も少なくないでしょう。
福澤諭吉は多くの著書を残していますが、最も有名なものは「学問のすすめ」と思われます。300万部以上が売れた「学問のすすめ」は、当事の日本人の10人に1人が読んだ計算となる驚異的なベストセラーでした。現代においても「学問のすすめ」は多くの現代語訳が書店に並んでおり、根強い人気を誇っています。
「学問のすすめ」を読むことは、福澤諭吉の考えを理解する上で大いに役立つと考えられますが、読み通すには相当の時間を要します。また、執筆された時期は福澤諭吉の30代後半から40代初頭にかけてであることから、66歳で没した福澤諭吉の人生後半における経験等は直接的には反映されていません。
一方、この本で紹介する「修身要領」は、福澤諭吉がこの世を去る1年前に発表されたものであり、その内容には、彼の人生における主義主張が見事に凝縮されています。当初から日本国民全体への普及を念頭に置いたものであり、福澤諭吉の日本国民に対する強いメッセージとも言えるでしょう。
「修身要領」は前文と29カ条で構成されている簡潔なものであり、福澤諭吉の考えを理解する上で最も手軽なツールとも言えます。しかしながら、「修身要領」の価値は、その手軽な量ではなく、その内容にあります。例えば、家父長制が当然であった時代において「男尊女卑は野蛮の陋習」と明確に否定しています。その他にも、健康の大切さ、自殺の戒め、結婚相手を慎重に選択することの大切さ、家庭の幸福の重要性、自己啓発の大切さ、博愛精神、動物愛護、芸術を理解する重要性、政府支出の国民による監督等々、現代に生きる日本人が読んでも、感心する内容が目白押しです。
この通り、「修身要領」には現代日本人が充実した人生を送る上で大いに参考になる内容が29カ条に凝縮されています。人生に迷った際に読み返すのにも負担とならない文量です。是非とも多くの日本人に目を通して頂きたい内容なのですが、残念ながら現代語訳による紹介が世間には見当たりません。
「修身要領」第29条には「吾党の男女は、自ら此要領を服膺するのみならず、広く之を社会一般に及ぼし、天下万衆と共に相率ゐて、最大幸福の域に進むを期するものなり」とあることから、今回、「修身要領」を「広く社会一般に及ぼす」ために、現代語訳を出版する次第です。
本書の現代語訳については、たとえ中学生であっても内容が理解出来るように、なるべく平易な日本語での訳を心掛け、意訳した部分も少なくありませんが、そのために原文が持つ独特のリズム感が失われてしまったことは否定できません。そこで、現代語訳を読んで内容を理解された方は、是非、巻末に収録の原文も読んで頂き、原文独特のリズムや文章の勢いを感じて頂ければ幸いです。