二十年前行方不明になった父の遺した日記帳を手に、サンギスが見つけたのは小さな人魚！？
ひ弱な青年サンギスは、弟に頼まれるまま田舎町の小さな教会へ赴く。
牧師の案内で訪問した父の暮らした家で人魚と出会い、彼の運命は大きく動き出す。
温かな町の人々、口は悪いが優しい親友、確執の多い実家……。
父と人魚の関係は？
父が行方をくらました理由とは？
そして人魚の正体は？

ファンタジー風味の青年成長物語。


■目次
・プロローグ
・モノローグ　一
・第一章
・第二章
・モノローグ　二
・第三章
・モノローグ　三
・第四章
・第五章
・モノローグ　四
・第六章（一話・二話・三話）
・第七章
・モノローグ　五
・第八章
・エピローグ

――――本文より（第一章　冒頭）
　その手紙が届いたのは、ちょうどサンギスが友人を送り出したときだった。郵便配達夫から手紙を受け取っているサンギスを見て、彼は酒瓶を両手に携えたまま戻ってきた。
「よう、金か？」
「早く帰れよ、ディーネス」
　片手を犬でも追いやるように動かし、もう一方の手で差出人を確かめる。確かめるまでもない。届く手紙は毎月決まっているし、筆跡は確かに弟のものだった。
「いい弟くんを持って幸せだなぁ、なぁ、兄貴。毎月忘れず仕送りをしてくれるなんてよ。俺にもこんな弟がいたらどんなにかいいか」
「代わりにただで酒をくれる友人がいるじゃないか」
「いらないって言うからもらってやったんじゃねぇか。な、本当にもう金輪際飲まねぇってのか？　え？」
「うるさいぞ」

――――――
読了にかかる時間 約227分 （500字/分の場合）
文庫本換算 約258ページ（39字×15行）