本作にあるのは土曜の夜と日曜の朝にうってつけの音楽だ。晩年のサム・クックは土曜も日曜もふくめ、じっさい毎日のように曲作りをしていた。よどみなく情感豊かに響く歌声と、優雅でさりげないパワーに恵まれたクック。1964年に不可解な状況で非業の死をとげたものの、その遺産は年々ふくれ上がるばかりだ。全23曲中21曲が長年入手困難だったナンバーの本作で、クックの内なる炎はただ燃えつづけるだけでなく、もう一段レベルを上げている。大半のナンバー（その多くはクック自身の作曲・プロデュース）はキャリアの後半の作品で、ビートの効いたソウルフルなタイトル曲は、亡くなる1か月前にレコーディングされている。また、本作にはライターのピーター・ギュラルニックによる詳細なライナーノーツが付き、名曲「Another Saturday Night」「A Change Is Gonna Come」、それに腰を振りたくなるようなカヴァー曲「Tennessee Waltz」と楽しげな「Yeah Man」も収録されている。「Yeah Man」のメロディーはアーサー・コンレイの「Sweet Soul Music」にも使われた。現代のネオ・ソウルは、しばしばそのルーツに立ち戻ることで先人たちに恩返しをしているが、同時にクックの洗練された情熱をルーツとする偉大な音楽の恩恵を受けているのだ。本作はマストアイテムと言える。（Amy Linden, Amazon.com）