オブジェクト指向を否定する意見には、現実の開発者にこの段階での設計力がないために、再利用をするクラスの設計など不可能であるという意見がある。しかし、すぐれた設計者の設計思想を知り、自分のものにすることで、より安全性が高く適切な制約を持ったクラス設計ができるようになる。そのための定石が記述されているのが本書である。カプセル化、継承、ポリモルフィズムというオブジェクト指向の基本から始まり、オブジェクトの生成、コレクション、イテレータなどの効率の良いプログラムを作るための設計原則までが解説されている。各原則は、詳しいサンプルプログラムとその説明、わかりやすいクラス図で解説されている。
本書は、Java言語は理解したが、オブジェクト指向設計という段階で、いまいちピンとこないと思っている人におすすめの1冊である。特に、Javaの持つ能力を自在に操りたいという目的意識のある人には最適であろう。(川藤一真)