泉鏡花はこれだけ読め!
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泉鏡花について
泉鏡花は一八七三年、金沢市に生まれました。幼少期を金沢で過ごした鏡花は終生、故郷と母とを哀惜し、折に触れて作品に登場します。しかし、母は出産後の産褥熱のため鏡花が十歳のとき死亡し、鏡花は強い衝撃を受けます。
十六歳の時、友人宅で読んだ尾崎紅葉の「二人比丘尼 色懺悔」を読んで感激し、文学を志すようになり、十八歳のとき、東京の牛込の紅葉宅を訪ね入門を志願します。こうして、鏡花は紅葉宅での書生生活を始めます。
紅葉の薫陶を受けながら鏡花は次第に実力をつけていきます。中でも、一九〇〇年に発表した「高野聖」のすぐれた幻想性は目を見張るものがあります。この他にも、「照葉狂言」、「婦系図」、「歌行燈」などの傑作を世に送り出しました。
江戸文芸の影響を深く受けた怪奇趣味と幻想性は、現代でも高く評価されています。特に幽玄華麗な独特の文体と巧緻を尽くした作風は、川端康成、石川淳、三島由紀夫らに影響を与えました。
中島敦は、以下のように述べて泉鏡花の文章を激賞しています。
「日本には花の名所があるように、日本の文学にも情緒の名所がある。泉鏡花氏の芸術が即ちそれだ。と誰かが言って居たのを私は覚えている。併し、今時の女学生諸君の中に、鏡花の作品なぞを読んでいる人は殆んどないであろうと思われる。又、もし、そんな人がいた所で、そういう人はきっと今更鏡花でもあるまいと言うに違いない。にもかかわらず、私がここで大威張りで言いたいのは、日本人に生れながら、あるいは日本語を解しながら、鏡花の作品を読まないのは、折角の日本人たる特権を抛棄しているようなものだ。ということである。(中略)鏡花氏の作品については之を知らないことは不幸であり、之を知ることは幸である。とはっきり言い切れるのである。ここに、氏の作品の近代的小説でない所以があり、又それが永遠に新しい魅力を有つ所以もある。」
この作品集には以下のように小説21編と戯曲3編を収録しました。
1、義血侠血(1894年、読売新聞)
2、取舵(1895年)
3、夜行巡査(1895年、文芸倶楽部)
4、旅僧(1895年)
5、外科室(1895年、文芸倶楽部)
6、紫陽花(1896年)
7、琵琶伝(1896年、国民之友)
8、海城発電(1896年、太陽)
9、照葉狂言(1896年、読売新聞)
10、化鳥(1897年、新著月刊)
11、高野聖(1900年、新小説)
12、春昼(1906年、新小説)
13、春昼後刻(1906年、新小説)
14、婦系図(1907年、やまと新聞)
15、歌行燈(1910年、新小説)
16、眉かくしの霊(1924年、苦楽)
17、木の子説法(1930年、文藝春秋)
18、貝の穴に河童が居る(1931年、古東多万)
19、薄紅梅(1937年、東京日日新聞、大阪毎日新聞)
20、雪柳(1937年、中央公論)
21、縷紅新章(1939年、中央公論)
戯曲
1、夜叉ヶ池(1913年、演芸倶楽部)
2、海神別荘(1913年、中央公論)
3、天守物語(1917年、新小説)
(古典教養文庫について)
古典教養文庫は、日本のみならず広く世界の古典を、電子書籍という形で広めようと言うプロジェクトです。以下のような特長があります。
1、古典として価値あるものだけを
これまで長く残って来たもの、これから長く読み継がれていくものだけを選んで出版します。
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「価値ある古典こそ低価格で」のモットーから、古典教養文庫は、一番高い物で300円で、そのほとんどが100円となっています。