明治天皇については後宮に関する記述が多い。美子皇后(昭憲皇太后)との間に子はなく、5人の側室との間に15人の皇子女が生まれるが、無事成人したのは皇子1人(大正天皇)と皇女4人だけだったことからも、男系と決められた皇統を守るためには、それ以外に致し方なかったのかと思わざるを得ない。しかし、そのことが華族等の妾保持者の都合の良い論理に使われてしまったのは甚だ遺憾だ。
大正天皇に関しては、ユニークなエピソードが多い。遠眼鏡事件は聞いたことがあったが、生徒の寒中水泳を見て、「彼等はさぞ寒かるべし」と漏らしたため、水泳が途中で中止になったり、松茸狩では「殊更に植えしにはあらずや」と「やらせ」を見抜いたりと、お茶目な一面がわかって面白かった。人間臭くて親しみが持てたが・・・。天皇自身は病弱ながら、4人の皇子に恵まれ、そのためか側室はなかった。
昭和天皇は後宮改革に積極的だった。幼い頃から多くの女官に囲まれて過ごしたのが息苦しく、英国で見たアソール公の人間らしい生活に魅せられたのかもしれない。良子皇后(香淳皇后)との間になかなか皇子が産まれず、周囲から側室を勧める声も上がったが、昭和天皇自らがそれを拒否したそうだ。
戦後の十一宮家の皇籍離脱による混迷も書かれている。しかし、莫大な額の宝石類の所有には首を傾げざるを得ない。何故なら、国民は戦時中供出することが義務付けられていたからである。
尚、本書には誤りがある。デンマーク王室の皇太子妃はメアリー妃。(本書発行時には未婚)アレクサンドラ妃は弟ヨアヒム王子の妃であり、年齢も42歳ではなく、本年9月18日現在で40歳である。
ただ、「香港出身のデンマーク皇太子妃アレクサンドラ」とありますが、アレクサンドラ妃は皇太子の弟王子の妃で、皇太子自身はまだ結婚はしてなかったのでは?(間違ってたらすみません)
読みやすいという意味では、それなりに良いのではないでしょうか。