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フロイト全集〈10〉1909年―症例「ハンス」・症例「鼠男」

価格: ¥4,620
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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新訳が良いとは限らない ★★★☆☆
フロイトの有名な症例のうちの二例『ハンス坊や』と『ネズミ男』を、少し丁寧に目を通す機会を得た。
そのために本書を参考にしたので、一言感想を。

両方とも先行訳(人文書院のフロイト著作集)と原典と比較しながら読んだ印象では、特に『ハンス』では人文書院の訳の方が読みやすい。
読みやすいというのは、原文の意味が正確に捉えられているという意味で、である。

新しいものの方が良いとは限らない。
これはいったい何に原因しているのだろうと、考えてしまう。

もちろん新しい全集にも、感謝すべきところがないわけではない。
人文書院の著作集や原典の Gesammelte Werke にはついていない患者の履歴や、治療のための『原覚え書き』が全集には入っている。
もっとも、『ネズミ男』の覚え書きは、読んでいると頭が痛くなるような代物だが。
有名なケース2例 ★★★★★
岩波書店から刊行中のフロイト全集です。
これまで人文書院の「フロイト著作集」はありましたが、全集の刊行は本邦初になります。
フロイトの心理学的著作を年代順に網羅して全22巻の構成になっています。主な底本はドイツ語版全集(Gesammelte Werke)ですが、「失語論」など日本語版のみの著作も含まれています。

岩波書店のホームページでは、全巻予約した方のみに販売されるとのことでしたが、このようにアマゾンや一般書店でも買えるようです。ただ、すでに在庫がなくなった巻もあり、予約せずに全巻そろえたい方は発売ごとに購入していった方がよいかもしれません。
翻訳の信頼度は著作集に比べると格段に上がっているようですので、これからフロイトを読もうという方は、やはりこちらの全集を読んだ方がよいでしょう。著作集は割引販売などされていてお得にみえますが。
全巻で統一された重要な用語は、著作集などで親しんだものとはかなり変更されており、違和感があります。例えば、欲望(願望)、想い出(記憶)、快原理(快感原則)、リビード(リビドー)などです。(カッコ内が従来の訳語)
脚注や書誌事項は、翻訳者にもよりますが、独語版や英語版全集からの引用が多いです。

本巻には、言わずと知れた「ハンス」と「鼠男」のケースレポートが収録されています。さらに「鼠男」については分析の原記録も収録されています。著作集の翻訳がいまひとつだったということもあり、買う価値のある巻といえるでしょう。

収録著作
●ある5歳男児の恐怖症の分析〔ハンス〕●ハンス少年分析後日談●強迫神経症の一例についての見解〔鼠男〕●強迫神経症の一例(「鼠男」)のための原覚え書き

月報8
タナトスの影の下に――フロイトとシュテーケル(1) 平野嘉彦
フロイトの現在――反グローバリズムと普遍性への問い 十川幸司
忘れたことを忘れさせない――フロイト<と>反ユダヤ主義 菅野賢治