戦争と平和の作者の心
★★★★★
核廃絶の機運が高まっているという。 その一方で核の傘を 確実にしようという会談が同じ政権と 行われる。 平和をもとめ 非暴力による抗議、不同意で意思表示をすることを説いたガンジーに大変傾倒していた トルストイが 書いた童話 カフカースのとりこがすばらしい日本語で 今 わたしたちがよみやすい形でよみがえった。 チェチェンでの虐殺やらち、テロと 血なまぐさいことばかりでチェチェンは有名になっているが そのチェチェンで従軍した経験のあるトルストイが 地元のコーカサスに対する素朴な暖かい眼をもっているのが 言葉で説明するのでなく伝わってくるのはなぜなのだろう? 民族の独自性を尊重するなどとおおげさなことは言わずしかも 主人公のジーリンは 貧しい農家の息子 身代金など払えない それが タタール人と総称されているコーカサスの武装勢力につかまって アタマのけがによる血のかたまりで眼が見えず連れて行かれる道を必死で見ようとする、そんな場面で始まる物語。 ところが なぜか そこにいる地元の主人に対しても 村人や 朝早く水くみにいく娘たちなどの描写が とても美しく コーカサスの懐かしさが伝わってくる。 敵味方というような 感覚に汚されない もっとしなやかで純粋な美しさが全編に流れているすがすがしさ。 これが 戦争と平和を書いた そして 権力を嫌った大作家の文章ということなのか?
くせのない 押さえた訳がなお たとえばジーリンが手塩にかけてそだてあげた馬の生き生きとした様子などをよく伝えている。 夏休みに購入する自分へのプレゼントとなった。
なお わたしにとってはカフカースというロシア語読みよりやはり 初めて本を読み聴かされた幼年時代に出会ったコーカサスが好きだ。