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ショーシャ

価格: ¥3,150
カテゴリ: 単行本
ブランド: 吉夏社
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シャーシャの幻 ★★★★★
74年のアイザック・バシェヴィス・シンガーの作品。主人公アーロンとはつまり作者であると言っても過言では無い半自伝的小説。幼少期からユダヤ神秘思想を頭に叩き込まれる半面、早熟な精神的反逆者として異端者である事を自覚する少年。徐々にヒトラーの脅威が顕著になりつつある、ポーランドのユダヤ社会にあり、共存不能な各種思想に覆われた混沌とした世界が広がっていく時代の狭間に立たされる。実際のシンガーは1936年にアメリカに亡命する。そうした逃避を懺悔する意味合いもこの書にはあると思う。この本が現実のシンガーと違う所は主人公は亡命の誘いや自殺の衝動を抑えこの地に留まった事。生まれた町に戻った主人公は幼馴染のショーシャに20年ぶりに再会する。彼女はなぜか20年前と全く変わらない姿であった。そして主人公を待ち続けていた。彼女は実在の人物である。しかし現実世界のシンガーは彼女と再会する事は一度も無かった。老年にいたった作者が少年時代の想いの人や亡き肉親達と書物の中で巡り会う話と書けば、とても感傷的に聞こえる。確かにそういう想いももちろんあるであろう。なぜ無垢なままなのか?この姿の変わらないショーシャに自分が捨てた祖国の姿を重ねている事は明白である。この作品を感動的な作品と読んでもいいし、後悔と懺悔録としても、後半部分などから、言い訳や、社会を周智しつくした作品とも、厭世的で開き直った作品と読んでも構わないであろう。「魂の探検」と言う様に、登場人物それぞれが男も女も当時の思想や状況の各代弁者的な形で置かれている構成であり、全てが作者の言葉であり、想いであり、彼の魂の叫びと葛藤と彷徨の記録である。彼の魂は彼自身だけで無く、人類全体としてあらゆる枠組みを超えて昇華する。しかし彼のユダヤの血は消せはしない。決して忘れる事も無い。彼がイディッシュ語で作品を書く事にそれは証明されている。これ程、無垢で老獪で純粋な作品はそうあるものでは無い。素晴らしい作品である。ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思います。