そもそも「情報デザイン」とは何だろうか? 本書ではそのような素朴な疑問に対して「論理的な裏付け」「実践例」「技術的なアプローチ」と大きく分類した上で、斯界の専門家がそれぞれの分野について解説する物だ。「情報デザイン」をいかにカテゴライズするかという哲学的な論考から、博物館での具体的なナビゲーション設計の実例実例、インタラクティブなコンピュータ技術の最新動向までと各論は幅が広い。このように、ある意味で散漫な内容は、最終章で編者が敢えて言うように「情報はデザインできない。デザインできるのは伝達のモードであり、情報の表現方法である」と言うことにも通じる。
執筆した専門家が大勢いるように、自分にとって「情報デザイン」とはどのような意味を持つ言葉なのかを探って選び取ってさらに読み進めば良いのだと思う。
個人的には実践例が一番面白く読めた。日常風景の中にある情報の可視化や、インタラクションについていかに考えるべきことが多いのか、ということがよく分かったが、情報デザインの設計意図に合わせて人間が行動するのかどうかという点は考察が少ないように思われた。