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毒殺魔の教室 (上) (宝島社文庫 C と 1-1)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 宝島社
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良質なミステリー作品 ★★★★☆
 過去の事件に対して関係者の証言を元に解き明かしていくミステリー小説.
変に驚かすような場面は作らず,オカルトにも逃げていない.
フーダニット,ハウダニットはすでに明らかであり,ただただワイダニットを追求していく手法は面白かった.
示される真相は十分に納得のできるものとなっており,こじ付けが無いという点も評価できる.
良質なミステリーだった.
現在の臨場感を陵駕する過去の神秘性 ★★★★★
 ミステリーには二種類ある。一つは物語の進行中に殺人事件が発生し、その経過と解決までの過程が描かれるもの。もう一つは物語が始まるときにはすでに殺人事件は終わっており、その真相が明らかにされる過程が描かれるもの。
 映像化して面白いのは前者かも知れないが、小説として面白いのはむしろ後者ではないだろうか。映像によっては表現することのできない「過去」(フラッシュバックという方法があるがそれはあくまでも現在化された過去でしかない)は言葉によって語るしかないが、「語り」は「騙り」を必然的に含まざるを得ない。もはやどこにも存在しない、しかし確かに実在したはずの過去をめぐって謎が謎を呼び、記憶のヴェールに包まれたその神秘性が、目の前にあるクリアな現在が持つ迫力や臨場感を凌駕するミステリーを形成する。本書はそのような「過去」の持つ神秘性を最大限に活かした作品と言えよう。
 三十年前に小学校の教室で発生した毒殺事件。給食の牛乳を飲んだクラスの優等生が死に、その二日後に犯行を認める遺書を残して同じクラスの劣等生が同じ毒を飲んで自殺。忌まわしいとはいえとっくに終わったはずの事件の背後にあった複雑な人間関係が、当時の同窓生たちの証言によって次第に明らかにされてゆくのと並行して、今現在それを調査している人物の輪郭も次第に浮かび上がってくる。
 もともと一冊の単行本だったものが文庫版では上下二冊に分かれているが、上巻を読んで下巻に手を伸ばさないのは至難の業であろう。過去だからこそのスリルとサスペンスに満ちた佳作である。
もう少し文章を練ってほしい ★★☆☆☆
小学校の教室で起きる毒殺事件をめぐる長編ミステリ。2008年「このミス」優秀賞の受賞作。

基本的に、30年前の事件を回想する形で話が進むという、ちょっと変わった構成である。結局、地の文があまりないので、あらかた主観的な会話(そう、特に会話シーンがめっぽう多いのだ)がメイン。また(装丁の問題だが)文字がでかくて改行も多いので、集中して読んでいないと、話においていかれるきらいがある。

さて内容ですが、トリックがどうのこうのというより、極めて複雑な人間関係をそれぞれ紐解いていくのに一苦労、という感じでしょうか。ハウドニットでは決してなく、すべてがホワイダニットを解明するための話なんですね。ラストには最終的にすべての意志が明らかになるわけですが、ちょっと動機が異常な気がしますねー。横溝正史なみ。

なので、最後まで読んだところですっきり!とはいかない。こういうのが好きかどうかによって評価が分かれる気がします。

あと気になる点として、文章の推敲が不十分な気がしますね。まあ単に文章が練れていないだけかも。例をあげると、第8章の手紙、誰宛に書かれているのかがとても曖昧です。この矛盾が伏線なのか?と深読みしたのに、単に推敲されてないだけぽいし(別の深読みをすれば、今時のおバカな大学生が書く手紙はこの程度、という読みもありますが・・・。***本人にあてているのに、***という小説家が、なんて言い回しは絶対おかしい)。
我々にとり小学6年生とは何か、久しぶりの傑作ミステリー。 ★★★★★
すごいタイトル。「毒殺魔」なんて聞いたことなし。さらに「教室」と続く。
これだけで、本屋にこの書があったら手にしてしまう。
えい、買おう、読もう。
プロローグからエピローグまで著者のサービス精神に気持ちよく乗り、一気に読ませる。
自分の小学6年生の頃を、作品の時代背景との差異を考え思い出してしまう。
義務教育の小学校。生々しい描写。
そう、小学6年生はガキではない。特に女子はそうだった。男子も負けてはいなかったが、なにせ女子のほうが肉体変化は激しかった。
男子たちは戸惑うこと多かった。
一章ごとにワクワクさせてくれる。
文章もわざと固さをのこしている。
これだけの作品、久しぶり。自己の子ども時代を再点検できる。
本当だったら、もう一捻りするかもしれない結末を、それをあえてしなかった著者に敬意を表する。