【目次】
★★★★★
プロローグ アイデアのもつ力
第一章 六つのエポック 15
直感的な線形的展望 VS 歴史的な指数関数的展望
六つのエポック
特異点は近い
第二章 テクノロジー進化の理論―収穫加速の法則 53
ムーアの法則とその先
DNA解読、記憶、通信、インターネット、小型化
経済的要請としての特異点
第三章 人間の脳のコンピューティング能力を実現する 111
コンピューティング・テクノロジーの第六のエポック
人間の脳のコンピューティング能力
コンピューティングの限界
第四章 人間の知能のソフトウェアを実現する――人間の脳のリバースエンジニアリング 163
脳のリバースエンジニアリング―その作業の概観
人間の脳はコンピュータとは違うのか?
脳の中をのぞき込む
脳のモデルを構築する
脳と機械を接続する
加速度的に進歩する脳のリバースエンジニアリング
人間の脳をアップロードする
第五章 GNR――同時進行する三つの革命 251
遺伝学――情報と生物学の交差点
ナノテクノロジー――情報と物理世界の交差点
ロボット工学――強いAI
第六章 衝撃…… 381
人体
人間の脳
人間の寿命
戦争――遠隔操作による、ロボット工学を利用した、頑健で、縮小化された、ヴァーチャル・リアリティのパラダイムについて
学習
仕事
遊び
宇宙のインテリジェントな宿命――宇宙にはおそらくわれわれしかいないと考える根拠
第七章 わたしはシンギュラリタリアン(特異点論者)だ 487
意識をめぐる厄介な問題
わたしは誰? わたしはなに?
超越としての特異点
第八章 GNRの密接にもつれあった期待と危険 525
もつれあった期待……
……そして危険
さまざまな生存上のリスク
防御を整える
放棄という考え方
防御技術の開発と規制の影響
GNR防御のひとつの計画
さまざまな批判とその反論
エピローグ 590
あとがきにかえて 594
原注 597
特異点が待ちどおしい
★★★★★
久しぶりに科学の本を読んだけど、読んでいると面白くてワクワクして来た。
以下、自分なりのまとめ。
レイ・カーツワイルさんが主張するタイムテーブルは次の通り。
2020年代 AI が 人間並みになる
2030年代 ナノ単位の小ささのロボット(ナノボット)で体内から多くの病気を治せる
同じくナノボットで脳内からヴァーチャル環境に完全没入できる
2040年代 人間の脳の構造が研究しつくされ、コンピュータは超高性能になる
その結果、人間の脳内の情報をコンピュータにコピーできるようになる
コピーされた脳内情報とは「人間自身」なので、人間もまたコンピュータ並みに
超高速で考えられるようになる。
科学は爆発的に発展し、ヴァーチャル環境と同じことが現実でも可能となる。
これは、人間自身が人間を進化させ、新しい種を生み出したのと同じ。これが「特異点」だ。
というのが作者の主張だと思う。
多くのページは、この裏づけのために多くの研究者の仕事を紹介している。
これがまた、個人的には面白かった。
はやく人間並みになった AI を見てみたい。(^-^)/
夢のある奇妙な未来を感じさせる一冊。。。
★★★★☆
レイ・カーツワイルによる未来本です。
遺伝子工学(G)、ナノテクノロジー(N)、ロボット工学とAI(R)が加速度的に進歩し、あと20年経つととんでもない世の中になるようです。
ある種、荒唐無稽なSFを読んでいるようですが、じっくり考えると、もしかして現実に起こるかも知れない!と思わせる愉快さがあります。
科学信仰の告白書
★★★★★
カーツワイルの言う「特異点」とは
人間の知能にコンピュータが追い付き、
それ自身の知的能力を増強し始めることを指している。
これまでのテクノロジーの進展についての考察と異なるのは、
ムーアの法則、とそれに近いコンピューティングの指数関数的成長理論に基づいて
特異点は2040年代の後半だと断言している点である。
これはこれまでの未来学者にはなかった潔い態度である。
私にはもう少し遅くなるように(直感的に)感じられるが、
言い訳を許さない、あいまいさのない予測と態度はたいへん好感が持てる。
ナノテク、バイオテク、神経科学などが相乗的に展開し、
近い将来に人類が未曾有の繁栄を実現するというのは、
悲観論の多い常識的メディアと決別していて痛快である。
私が驚くのは、この著作に代表されるような、
実にアメリカ人的な、飽くなき自己能力の増強への野心、
人類の発展の不可避性への確信、あるいは信仰である。
最後はSFのオメガ・ポイントにも似て、
ワーム・ホールその他を利用して人類の拡大が光速を超え、
全宇宙が人類の知性によって満たされるという。
あるいは、これはさらには他の宇宙の創造によって
他の並行宇宙をも創造して人類の知性が無限に拡大するだろうのという考えは
物理学者ミチオ・カクの著作にも通じていて、物理学を超えて興味深い。
また、この世界が、他の知性によるシュミレーションかもしれないというのも
単なる哲学を超えて真剣に議論するあたりも、ある意味新鮮であった。
また興味深かったのは、彼はテクノロジー信仰の具現化といえる人物であり、
自身の不老不死を目指して、体内の物質濃度を最適化しようという行為を
今この「現時点」において、すでに実行していることである。
カーツワイルの科学信仰の告白が本書であるといえるだろう。
日本という狭い枠組みから眺めると、まさに超越的人物である。
時代錯誤の科学信仰
★★☆☆☆
近頃元気の出ない科学万能の夢物語を聞かせてもらえたが、やはり苦笑を禁じえない。没主体の科学信仰はまだこのような形で延命できるのかと参考にはなった。これが万が一現実とならば、いったいどれほどの恐るべき代償が招来されるのだろうかと寒々としてきた。レビューではマトリックスを超えるとあるが、超監視管理統合社会を予見した皮肉なのだろう。