野心的企業家Reid Malenfant の野望－１００万年かかろうが、１０００万年かかろうが、人類を銀河系宇宙に満ち溢れさす－に沿って話が展開していきます。手始めに小惑星を開発し、その資源を利用して太陽系ないし近郊の宇宙へ繰り出す計画です。小惑星への斥候は遺伝子改造を施したイカ（烏賊）です。このイカが曲者で宇宙に満ちるのは人類ではなくでイカなのではないかと心配させられます。
小説のテーマは壮大です。時空を移動できるartifactを発見し、ビッグバンから子宇宙、孫宇宙までさまようことになりますが、知的生命に満ち溢れた宇宙はどこにも存在しないのです。我々の宇宙が不完全なためのようです。それを解決するのが人類の使命ですが、残された時間は２００年です。Humans are the most important sentient creatures who have ever existed, or will ever exist. Mind has assumed responsibility for the evolution of the cosmos.
巻末にアイデアの出典がのっています。９点が事実で残りがフィクションであると書いてあって、どうだと言わんばかりです。次作Manifold: Spaceが楽しみです。MalenfantにはThe Light of Other Days の同じく野心的企業家Hiram Patterson を髣髴とさせるものがあります。彼の書は共著ですが、Baxterが筆をとっていることが推測されます。

　2010年、世界は環境悪化が進み、ブルーチルドレンと呼ばれる異常な天才児が同時多発的に現れるなど、終末的な様相を帯びています。

　ドロップアウトした元NASAの宇宙飛行士マレンファントは、離婚した妻エマとともに、ベンチャー企業ブートストラップ社を成功させています。彼は、積年の夢を果たすため、NASAをあざむいてスペースシャトルの廃物を使い、探査ロケットを打ち上げようとしていました。

　しかし、彼の前に現れた不気味な数学者コーネリアスが、世界は２００年後に終わると告げた瞬間から、物語は異様な展開を見せ始めます。コーネリアスの提案でマレンファントが作った量子受信機が、未来からのメッセージを受信したのです。マレンファントは、メッセージに従って探査ロケットを、小惑星クルーシンに打ち上げます。そのパイロット・シーナ５は、なんと、遺伝子改良されたヤリイカなのです！

　宇宙船の中で寿命が尽きようとしたシーナ５は、より進化した子供たち、シーナ６を生みます。クルーシンの地表で、シーナ６は、何者かが作った未来へ通じるゲート「ポータル」を発見します。ポータルからの中継で千兆年の未来を垣間見たマレンファントは、自らクルーシンへの違法なフライトを敢行します。しかし、アメリカは、追手として海兵隊を飛び立たせるのでした。 　バクスターが新しい試みに挑戦しており、長編が何本も書けるであろうアイディアとガジェットがてんこ盛りで、楽しめます。 　バクスターの新シリーズ、マニフォールド"多様性"シリーズの第１作。第２作 SPACE も2001年初めにハードカバーで出版されました。