島の暮らし
★★★★☆
初出は1986年の『週刊朝日』。28巻には「耽羅紀行」が収められている。
1985年の10月と12月に、韓国の済州島を訪れた記録である。韓国のなかでも済州島は特異な位置を占める。ポツンと離れた火山島で、地味は薄い。政治的にも不遇の時代がつづいた。一方で中央からの流人が次々と送り込まれたことでも知られる。そして現在では一大観光地として発展しつつある。
そうした「島の生活」が見事に描き出されている。貧困や圧迫のなかで生きる人々、古い文化の生き残り、流人の悲しみ。司馬氏の得意とする話であり、なかなか面白かった。