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社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム (講談社現代新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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社会的でもあると同時,とっても生物学的なことでもある ★★★★☆
身体を社会的構成物として捉え直す.いいです.長い時間かけて変わっていく生物学的身体と短い時間で作り替えられる社会的身体の対比.「操作性」が,快楽に結びつく.それは社会的でもあると同時,とっても生物学的なことでもあるように,僕は感じています.
分析に徹している ★★★★☆
非常に多彩な事例を駆使し、書名にある社会的身体、それに関連して有害メディア、そして振る舞い、お笑い、ゲーム、ネット、ニコニコ動画、祭り、運動(ちなみにこの場合の運動とは政治運動的な意味)といった事、現象について分析していく。それなりに面白いのだが分析に徹している感があり、やたらと自作(?)の用語を持ち出して「これはAだ」「これをBと呼ぶ事にしよう」といった分類が連発されている印象がある。別にそれが悪いといわけではなく、それを駆使して先に踏み込んでいくというよりは圧倒的にそういう分類、分析をその内容にしている、という点だけ指摘したい。

実際著者も最後に本書の分類は、この先必要な事を考えるための有効なツール(道具)になるだろう、といった事を言う事でこれからもっと踏み込んで実践的な提言をやっていくような素振りを見せている。見せているが、本書で最後にそれを見せているという事は要するに本書はツール作りに徹したという事だろう。暫くの間はそのツールを使って踏み込んで物事を論じるのは読者に任せるとの事だ。僕は色々用語を作って綺麗に分類したから皆この用語と分類で色々自分で考えてみてね、というわけだ。

本書で言われる事は、社会的身体、有害メディアからゲームやネットの話まで、それらを多少知っていたり経験のある人にとっては殆ど真新しい指摘はないかもしれない。ただ実感的に本書で言われる事と同じ事を理解していても、著者のようにやたらと用語を駆使して綺麗に整理分類して理解するような事は恐らくそこらの一般人はしていないはずである。だから著者のこういった事についての綺麗な整理分類はこれらの事についてのよりまとまった理解を可能にするという意味で有意義なものだと思う。

個人的には特に最後の運動を三つに分類した箇所が面白かった。そこでは階級闘争のような古い社会運動、マイノリティ運動や反核運動のような新しい社会運動、、そして硬い政治的目標よりも単なる快楽や楽しみを目的としたネットの祭りのようなポスト社会運動の三つが運動の形として紹介されているのだが、ネット上においてそういう現象があるとは知りつつもあまりこのように三つの運動形態を比較して把握しようとした事はなかったため若干目から鱗な気もした。まぁよくよく考えればこの分類もなんら珍しいものにも思えず、経験的な実感としては殆ど既に知っているような事なのだが、それが改めてネット上の政治運動においてこういう奴は新しい社会運動的な活動家タイプなのだとかなんだとかと綺麗に整理された嬉しさがある。
知的なネタの編集がとても巧みです ★★★★☆
現代のメディア環境を批評的に認識するための本。第1章では、新しいメディアの出現が「旧世代」からのバッシングを引き起こすのはなぜか?という問題提議から、「メディアは身体化される」というテーゼを打ち出しその身体的能力の獲得や運用に着目することが重要であると述べこの著書全体をつらぬく視点を提供する。こうした切り口はけっこう面白かった。第2章では、「ネットの普及はテレビの影響力を減退させる」といった俗説に対し、むしろネットにそなわったネタ共有機能はテレビをはじめとする巨大メディアの存在意義をこれまで以上に強化する、と指摘。これは中川淳一郎氏の傑作『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)でもより明解に説明されていた論点であるためか、著者の議論はややまどろっこしい感じがした。第3章ではテレビ時代における「お笑い」の変遷を概観しつつ、多くの視聴者がコミュニケーション的に「消費」しやすい一発芸、キャラ芸が現在流行していることの意味を問う。これに続けて第4章では、まるで「ゲーム」のように「楽しい」からこそ皆が参加する、ネット社会における新しい「社会運動」の構造を分析する、となかなかあわただしい立論が続く。
全体としては読みやすくて勉強にもなるのだが、なにか「さらさら」と読めてしまいすぎて刺激や驚きに乏しくもあった。ネットやテレビを中心とするメディア上の各種コンテンツをたっぷりと楽しみ、だが一歩引いて、現代思想や社会学の知見を武器にしながら目前の現象にそれらしいコメントをする、というタイプの「社会的身体」は相変わらず顕在だなあ、という印象は強かったのだけれど。