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夜露死苦現代詩 (ちくま文庫)

価格: ¥998
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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都築響一集大成 ★★★★★
サブカル的観点から語られることの多い都築氏の著作だが、この人の姿勢は、むしろジャーナリズムにあると思う。
「都築響一」というフィルターを通すことで、取り上げる対象に自動的に付加されるのは、サブカル、あるいはアートの化粧だ。これが鼻についてしまう人も確かに存在するだろう。
だが、本書で取り上げられた「詩」の原典は、痴呆老人の独白であり、餓死した親子の日記であり、ネット上に溢れるエロサイトの宣伝文句であり、通常のジャーナリスト的アプローチでは、読むのが苦しくなるほど陰惨になったり、取り上げること自体がタブー視されるものも多く含まれている。
本書では、本来、こうした題材を書くのに、どうしても必要とされる大義(あるいは言い訳)を排除することで、言葉の持つ魅力を鮮やかに引き出している。これを可能たらしめたのは、やはり都築響一という特権的おしゃれフィルターがゆえだろう。冒頭の「詩は死んでなんかいない。死んでるのは現代詩業界だけ」というアジテーションも見事。編集者として、理想の仕事だと思う。
そして、都築氏の編集技術すら不要なほどの高みに到達しているのが、故・玉置宏氏の話芸だ。果たして今、ここまで美しい日本語が存在するのだろうか。
日常にある現代詩。それを見つけられるか、出来ないか ★★★★★
都築響一の「夜露死苦現代詩」です。現代詩の閉鎖的な自家中毒の様を筆者は日常に拡散する。そしてその中に現代の本当の「現代詩」を発掘する。柳田国男が遠野で民話を発掘したように、筆者は日常に「現代詩」を見つける。死んだ詩ではなく、生きた現代の人間の心がそこにある。

痴呆老人のつぶやきから死刑囚の辞世の句、ヤンキーの特攻服の刺繍から、歌謡司会者の曲紹介、ワープロの誤変換から、エロ広告、ラップミュージックのライムまでを広く「詩」として捕らえて、それを読者である我々に紹介しています。閉鎖された世界でのみ流通する死んだ現代詩ではなく、日常に生きた詩を現代詩と捕らえたことは本書の最大の功績です。

世の中には様々な言葉があります。その中でも一種異彩を放つのが、死の直前に詠まれる「辞世の句」でしょう。本書には餓死した方の日記と、前出の死刑囚の辞世の句が掲載されています。どちらも背筋を伸ばして読まなければならない緊張感にあふれています。鋭利な刃物のような物語。それこそが現代詩なのでしょう。

人間の心を揺さぶる言葉。人間の人生を狂わすほどの言葉。言葉の力がまだ存在していることを認識したのでした。
あらゆる場所から詩がうまれる ★★★★★
「なぜ、自分がこの文章を書かなきゃいけないんだろう?」と戸惑いながら筆を進めている。
いま日本で生まれ消えようとする「リアルな言葉」を集め、記録し、論じるべき、文学者や評論家たちが、その責任を放棄してはいないか?
そんな詩壇や文壇、アカデミズムへの怒りを吐露しながらも、著者はその仕事を、たった一人で続けている。

パチンコ屋に、スナックに、老人ホームに、あらゆる場所に言葉があり、すべての人から詩が生まれる。
便所の落書きが人を鼓舞し、流行歌の歌詞に人は涙する。
暴走族の「夜露死苦」は、彼らの行き場のない衝動を漢字に込めた最高の現代詩であり、
インテリのほとんどが無視する相田みつをに、救われて生きている人がいる。

「誰もが愛しているのに、プロだけが愛さないもの。書くほうも、読むほうも「文学」だなんて思いもしないまま、文学が本来果たすべき役割を、黙って引き受けているもの。そして採集、保存すべき人たちがその責務をまるで果たさないから(学者とはそういう職業ではなかったか)、いつのまにか消え去り、失われてしまうもの。」

道端に落ちている輝く言葉を丹念に拾い集める。孤高の使命感が感動的な一冊。
玉置宏さんの話芸(歌謡曲のイントロで語る曲紹介)に触れた章が、個人的には気に入っている。

文学者や評論家が見向きもしない、あるいは敢えて無視する言葉が、ある確かな力で人々の心を動かしている。
詩や文学が本来持っていたその役割を、いま「文学」や「詩」とは無縁の場所で静かに担っている人がいる。
ならばプロの文学者が語る「詩」や「文学」は何を生み、誰を守り、どこに進んでいるのか。 彼らの「リアルな言葉」こそが、著者が本当に聞きたいことなのかもしれない。

「ほんとうはすごく詩的な民族のはずなのに、いったいいつから、だれのせいで、僕らは生きものとしての詩を失ってしまったのか。」
ガレージパンク。 ★★★★★
名著中の名著。
文字で書かれた『バック・フロム・ザ・グレイヴ』。
本でもレコードでも映画でも漫画でも、僕はこういうのが大好きです。
カテゴリーからはみ出してあふれ出す魅力 ★★★★☆
著者がまとめあげた「ほんとうにドキドキさせる言葉を生み出してくれる
現代詩のアウトサイダーたち」。
老人にラッパー、死刑囚、詠み人知らずのお色気俳句などなど。
ヒップホップや歌謡曲の歌詞をのぞけば
当然「現代詩」のカテゴリーに入ることもなければ
また、華やかな注目をあびることもあまりない言葉たち。
でもすごいエネルギーにあふれている。謎なもの、笑えるもの、戦慄するもの。
著者の作品に対する解釈、ツッコミも、ほど良い距離感で心地よく読めた。
一番、印象に残ったのは知的障害のある辰巳さんによって紡がれていくクイズ。
作った本人にしかわからない唐突な質問に
人間愛ともいえるような優しさとが組み合わさっていて、ぐっときた。