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黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫)

価格: ¥820
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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想像力は飛んでいく ★★★★★
人間、空は飛べないが、想像力は飛翔する。

ドイツの作家であり作曲家でもある、「お化けの」ホフマンが描く破天荒な物語。
本書は、ホフマンの多彩な作品を4点収録する。
どれもそれなりによかったが、やはり表題作の「黄金の壺」が秀逸。

「とんでもないものを書く作家だなあ」というのが、「黄金の壺」を読んで10ページめくらいの印象である。
りんご屋に激突して、なけなしの金を払わされ(しかも呪われ)る不運な大学生アンゼルムスが、河原を歩いている。
すると、美しい水晶のような声を持つ金緑色の蛇が現れて、彼は唐突に、しかし猛烈に恋をする。
蛇は一瞬で消えてしまうが、蛇が恋しくてしょうがないアンゼルムスは、木の幹に抱きつきながら、「もう一度姿を見せておくれ」と絶叫する。

どこからどう見てもおかしいこのテンションが、最後まで一定に続いていくから、続きがきになってしかたがない。
しかも、現実の中に、たえず幻想が割り込んでくる。
ふとした瞬間にドアノブは魔女の顔と化して、花火の映る水面には愛しい蛇の姿が見える。
まるでコインの表と裏のように、両者はスイッチが入れ替わるのだが、幻想が無闇やたらと美しい。
これだったら蛇に恋してしまうかもしれない。

さすがお化けと呼ばれた作家なだけある。
妄想なのか現実なのか、もはやそれはどうでもいいのだ。