オクターブ奏法の先駆者
★★★★★
本作はジャズというよりクラシックとウェスの融合という感じ。ビートルズの曲やスコットランド民謡の名曲、ジャズスタンダードをよりクラシックに味付けして、そこにウェスのギターが乗っている。親指で弾くギターの音色は本当に美しく、早いパッセージもオクターブ奏法で難なく弾いているのを聞くと、本当に驚異的だ。ウェスは親指で弾く温かい音が好きなんだそうだ。この美しい音色で聞かせたいので無理を承知で速いパッセージも弾いてしまう。ウェス登場の時点でオクターブ奏法は完成されている。あとはどれだけウェスに近づけるかだ。しかしウェス自身はテクニックありきではなく、曲重視でその中から必然的に生まれた演奏方法なのだ。曲芸的な難しさにこだわってどれだけ指が開くかとか、どれだけ速く弾けるかとか、くだらない競争をしているミュージシャンにはぜひウェスの精神を見習って欲しい。本作が遺作となってしまった事が本当に惜しい。
お久し振り!
★★★★★
Road Song、Wesの遺作ということも知らず、多分35年程前に何度か聴いて良いなと思いながら、その後何故か出会わなかったアルバムを久し振りに入手。矢張り、良いものは色褪せません。
30年前に連れてって。
★★★★★
ウェス・モンゴメリーのA&M移籍3作目にして遺作。オーケストラと共演したイージーリスニング的展開が硬派のジャズファンには評判悪いそうだけど、僕は大好きだ。このアルバムに入ってる"Fly Me To The Moon"は1970年代前半にTBSの午後2時からやってた再放送枠「TBS名作ドラマシリーズ」のOPテーマだったから。「日本沈没」や「岸辺のアルバム」とかを見る度に、一体何回聞いたかわからない。当時はタイトルもアーティスト名もわからなかったこの曲に再会するまで相当紆余曲折があったのだが、あまりに長くなるのでここでは省略。
これをかけると一瞬にして30ウン年前にタイムトリップできる、思い出の1枚。
ロードソング
★★★★★
ウェスモンゴメリー。彼はこのCDの録音をした後、一ヵ月後の1968年6月15日に亡くなりました。このCDの中に『ロードソング』という曲があります。この曲をウェスが書いた意味として、一つ挙げる事ができます。それは、「人生は長い道であり、じゃり道もあれば、できたての道もある」です。おそらく彼はレコーディング前から自分の寿命はそう長くないと感じていたのではないでしょうか?そう思って買ってみてください。100%ウェスが後悔させません。
ウエス・モンゴメリーの遺作にしてイージー・リスニングのルーツ
★★★★☆
天才ウエス・モンゴメリーの晩年はそれなりに恵まれていたのかもしれない。バド・パウエルやチャーリー・パーカーといった天才もついには不遇なままこの世を去ったことを考えると。もちろんウエスの本領はグルーブするジャズの世界で、その才能を存分に発揮することであったに違いない。しかし彼はCTIのクリード・テイラーというマネージメントに長けたプロデューサーと仕事をすることで成功と安定を手に入れかけた。そのことに対して誰も批判も否定もできない。どれほど黒人のミュージシャンが才能に恵まれていたとしても、生活の保障も才能に対するリスペクトを不足していたのだから。その意味でCTIはジャズに成功の活路を見出したレーベルであったのかもしれない。そして、ウエスがポピュラーな存在になり、商業的成功もほぼ手に入れた。しかし、彼の寿命はそれを跳ね除けるかのように無残にも時間を与えなかった。かくして幸福な晩年は彼の功績と名声を引き換えに終焉を向かえたのであった。