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日本文明と近代西洋―「鎖国」再考 (NHKブックス)

価格: ¥1,071
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本放送出版協会
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日本の近代化を新しい視点で俯瞰した快著 ★★★★☆
 「日本は他アジア諸国と異なり、植民地化されることなく、近代化を成功させた。それは何故か?」という明確な課題設定の下に、歴史を経済・文化・社会の複合的なダイナミズムとして捕らえ、西欧・アジア・日本相互の多面的な関係性を解き明かしながら、新しい視点・解を提示していく手腕は見事である。

 一般的に、日本の近代化の成功要因は、「江戸時代に育まれた文化の高さ」及び「日本人の勤勉さ」とする論説が多いが、川勝氏は、室町〜戦国期における日本と西欧の社会・文化の共通性から、議論をスタートさせる。
 当時、西欧も日本もインド・東南アジアとの物産の交易を盛んにし、類似の経済文化を作り出していた。交易の源泉となる金銀を、日本は国内生産(世界で唯一の貨幣素材自給国)し、西欧は新世界より調達という相違はあったが。

 その後、西欧は植民地化政策により、資本集約・労働節約的経済圏を構築して行った。一方、日本は西欧と同様の物産社会を維持しながら、鎖国政策に転向。国内金銀資源の開発、国内産業の振興により、自立した資本節約、労働集約的経済社会を構築して行った。

 方法は異なるがこの同類の経済・社会・文化を持った2つの世界が、幕末に出会う。

 近世〜明治期の日本経済は、アジア社会における物産交易手段を一貫して掌中にしており、他アジア諸国と異なり、物産を買いうべき立場にあった。これが、日本の近代化成功の要因である と氏は説く。

 論旨の明快さ、記述の分り易さが相俟って、実に面白い。

 後半(2部)の「唯物史観と生態史観」では、氏は自らの歴史観を説く。経済は、「生産」ばかりでなく「消費」に着目すべき。近代において、「経済力+軍事力」=「富国強兵」は唯一無二の近代化方法論ではなく、近世日本は「軍縮・平和主義文化」+「勤勉・循環型経済社会」を近代化に先駆けて構築した。ここに学ぶべきものは多いと説く。

 1部と2部の繋がりが希薄で、一冊の本としてやや纏まりを欠く面はありますが、歴史・経済に興味ある諸氏には是非一読を薦めます。
工業化を歴史的にみる視点の転換 ★★★★☆
経済史的には、工業化は西洋を中心に始まり、非西欧が取り込まれていく過程として描かれていた。しかし、本書の木綿の事例にあるとおり、アジア間競争が行われ、決して西欧の一方的な近代化に周辺が従属していく過程ではなかった。こうしたこれまでの歴史観の転換を行ったのが著者であり、先駆者として知られている。著者のこの業績は国内よりもむしろ国外で高い評価を受けている(著者の英文での著作物については国内で意外に知られていないが)。

本書はそうした彼のバックグランドを一般向けに書き直したものである。このため、やや厳密性を欠く記述もあるが、新書であるため致し方ない。また、これもいわば“川勝節”である。

現在では川勝氏が提起した歴史観は一般にも敷衍しつつあるが、91年当時!には非常に新鮮であった。これをさらに超えるパラダイムの提示が著者に期待される(現状ではまだのようだが)。

経済と文化の微妙な関係 ★★★★☆
 本書は二部構成になっている。第一部ではéŽ-国時代のæ-¥æœ¬ã¨ç"£æ¥­é©å'½å‰å¾Œã®ã‚¤ã‚®ãƒªã‚¹ã‚'経済史のè¦-点からæ¯"較ã-、第二部では第一部の枠組みであるæ-‡åŒ-・物ç"£è¤‡åˆã‚'めぐる議è«-ã‚'展é-‹ã-ている。第一部では非常に緻密なç "究ã‚'通じて「なぜ明治維æ-°ã¯æˆåŠŸã-たのか」ã‚'æ­'史的に明らかにã-ている。貿æ˜"è«-のæ¯"較優位説にå¾"えば発展段階に大きなé-‹ãã®ã‚ã‚‹æ-¥è‹±é-"の貿æ˜"ではæ-¥æœ¬ã¯ä¸€æ¬¡ç"£å"ä¸­å¿ƒã®è¼¸å‡ºæ§‹é€ ã«ãªã‚‰ã-るã‚'å¾-ないのだが、実際はそうではなかった。その原因とã-て筆è€...は綿製å"ã®ä½¿ç"¨å½¢æ...‹ãŒæ-¥è‹±é-"で異なっていたã"とã‚'挙ã'ている。確かにã"れまでの経済学ではç"Ÿç"£ã«é-¢ã-ての議è«-が多く、消費に影響するæ-‡åŒ-価値にé-¢ã-ての議è«-はå°'なかった。本書はその点ã‚'つき、æ-°ã-い観点からéŽ-国の意å'³ã‚'探求ã-ている。そã!‚Œ!に対ã-て第二部では前半部のメインテーマである経済とæ-‡åŒ-ã‚'より一般的にè«-じているのだが、前半とæ¯"べると議è«-がé›'になっているように思える。アイディアのç' æã¨ã-て興å'³æ·±ãèª­ã‚ãŸã"とは事実だが、不満の残るå†...容だった。筆è€...にとっては本書はまだ序説といった位置付ã'にあるようなので、筆è€...による今後の展é-‹ã‚'期å¾...ã-たい。非常に面白い議è«-だと思うので個人的には楽ã-みである。