ゴッホ(一八五三‐九〇)が一発の銃弾で三十七歳の生涯を閉じたとき世人はその作品をガラクタとしか見ていなかった.この書簡集はこうした世の無理解や悪意と戦って画業に燃焼しつくした天才の類まれな魂の記録である.上巻には親友であった画家ベルナール宛の,中・下巻にはいわば生涯を兄にささげた弟テオドル宛の書簡を収めた.
ゴッホ展(国立新美術館10/1〜)の予習の為に購入しました。
★★★★★
ゴッホ展(国立新美術館10/1〜)の見学の予習の為に購入しました。
それにしても、ゴッホは大変な量の手紙を書いているとのこと。
そして、それらの全てを、弟のテオが、
走り書きのメモ的な物まで保存しておいたとのこと。
この兄にしてこの弟有りという感じですが、
ゴッホの天才たる由縁の半分は、テオに拠るのではないでしょうか。
この上巻は、エミル・ベルナール宛の手紙が集められています。
ベルナールの序文が200ページほどの文庫の半分を占めていて、
これもなかなか面白い文章です。
もちろん、ゴッホの手紙自体も大変に面白い。
どう面白いのかは、ま、読んでみましょう。
ゴッホの芸術にかける無私の情熱、
清潔な人柄、とかがヒリヒリと伝わってきます。
ゴッホではなくベルナールの本
★★★★☆
この文庫の『ゴッホの手紙』は、上巻と中下巻とは、別々の親本の翻訳だ。だいいち、構成がまったく違う。本来、上巻と中下巻は別の書名で分けて出されるべきものだ。岩波はこういうでたらめをするから嫌いだ。
上巻は、二二通のゴッホの手紙を含む、エミール・ベルナールによるゴッホ回想録。つまり、序文の方が比重が大きい。ベルナールは、画家としては、いわばセザンヌの亜流だが、十九世紀印象派から二十世紀象徴派をつなぐ画風の変遷があり、その広い交友交際において美術史上の重要人物。そして、偏屈なゴッホの数少ない大切な友人だった。
ベルナールもまた独立の画家であるから、彼のゴッホに対する記述は、ベルナールの視点のヴァイアスを踏まえたうえでないと理解しがたい。しかし、だからこそ、ゴッホもまた、その見解の相違を前提として、作品や芸術に関する議論を楽しむことができる。ただし、ここでのゴッホの主張は、あくまでベルナールに対するものであって、ゴッホの一般的な主義と誤解してはならない。
このように、この上巻は、ベルナールという人物の暗黙の介在のために、芸術学的に解釈上のややこしい問題を含んでおり、きわめて専門家向けと言わざるをえない。単純にゴッホという人間的な姿を知るには、中下巻の弟テオとの書簡集だけで十分だろう。
ゴッホの模写が最初でした。
★★★★★
アムステルダムの美術館をはじめ、いくつかの美術館でゴッホを見ました。
ヨーロッパの美術館では、絵を志す人には、模写をさせているのが印象的でした。
本書を知るまでは、ゴッホの手紙は、弟とのものだけだと思っていました。
ゴッホファンにとっては、ゴッホを理解する、絵とは赴きの違った、別の道として貴重だと思います。
ps.
ゴッホの模写をしたことが、絵画を習いに行っていた最初の選択でした。
勤勉で理知的な利己心のないゴッホに会えます
★★★★★
エミール・ベルナールはゴーギャンらと総合主義を創始したフランスの画家でゴッホよりは11歳若い画家です。ゴッホと手紙のやりとりをしていた時期は20代前半で、本書には1887年夏から1889年12月の間にゴッホから受け取った21通の手紙が掲載されています(これに加えてゴーギャン宛の一通の手紙も含まれる)。ベルナールからの手紙は含まれていませんが、ベルナールによる長大な序文が本書の半分ほどを占めます。広く知られている弟に対する手紙とは異なり、本書では勤勉かつ純粋で理知的なゴッホに会えます。独創的なゴッホの画風ですが、模写や絵画の交換を積極的に行う姿勢から過去および現在の画家の研究と彼らへの尊敬は明らかで、およそ自らの功名心というものはなく、複数の画家によるグループが一つの画風を生み出すことを重要と考えています。自殺の直前の手紙も明晰で、非常に勤勉に創作に打ち込みながら、創作に役立つであろう新しい情報を熱心に集めていた姿勢にも驚きます。ゴッホが先輩画家(芸術家)として忌憚のない極めて理知的な助言をベルナールの絵や詩について書いており、この当時駆け出しであった後輩にも限りない尊敬が払われていることもベルナールの良い絵や詩に対する惜しみない賛辞などから明らかです。ベルナール自身の書いた絵などに対する多少の予備知識をいれてから本書を読むと理解の助けになります。
ゴッホが何を考えていたのか
★★★☆☆
ゴッホのよき理解者ベルナール宛の手紙を収録している。ゴッホが日々どういうことを考えて過ごしたのかを垣間見ることが出来る。
本文の間にある挿絵がいいなあ〜。
中・下巻では彼を経済的に支えた弟のテオ宛が収録されている。経済的に貧しく、恵まれていない中、絵を描き続けたゴッホ。最後は精神的にまいってしまい、悲しい結末となってしまうのですが。本書を読んで、本物のゴッホの絵を見たくなった。
それにしてもゴッホは日本が好きだったんだなあ。