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ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)

価格: ¥882
カテゴリ: 新書
ブランド: 光文社
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科学という名の冒険! ★★★★★
つまりこれは、「データロガー」という道具を使った、現代の科学者の冒険の物語なのである。

前世紀初めまで、欧州では世界の果てを目指した冒険家たちの旅行記が大人気だったということだが、当時の紳士・淑女を興奮させたに違いない驚きやときめきと同じものが、この一冊に詰まっている。著者自身が自らを前世紀初頭の冒険家・シャックルトンに喩えているように、「まだ見ぬ世界を見てみたい。」という人間の欲望は、いつの時代も変わらないのだろう。

そして冒険はいつも、少年の特権でもある。だから本書は、少年の心のまま、データロガーという“現代のビーグル号”を手にした良い年齢(とし)の大人が、自らの好奇心の赴くまま、地の果て・海の底をさすらった、その漫遊記でもある。なんと欲深く、しかし魅力的で、実は良く良く考えると少しばかばかしい(?)男の旅路であろうか(笑)。

ああ、私がもし、少年時代にこの本に出会っていたら…。
私はきっと、著者のささやく甘く危険な誘いに我を忘れて、このデータロガーという行き先の分からない冒険の船に飛び乗ったことだろう!
(しかし既に年老いて肥え太った私の髀からは、既にその軽やかさは失われてしまった…。)

だから著者自身の願いでもあるが、本書は是非、まだ逞しくみずみずしい筋肉と精神の輝きとを持ち合わせた少年たちにこそ、読んで欲しい。フロンティアはまだ、そこにあるのだ。

なお、本書に興味を持った方には是非、日本バイオロギング研究会の編纂による『バイオロギング』も読んでいただきたい。著者と共に、データロガーという船に乗って、バイオロギングの冒険を続ける頼もしい仲間たちの姿が活写されている。両書は共に、「科学とは心をワクワクさせてくれるものだ。」という、久しく忘れかけていた気持ちを思い出させてくれることだろう。名著である。
野生動物というのは、そんなにも知られていないのか… ★★★★★
世の中、前人未到というところはほぼなくなって、
現代の探検家は、どこに行ったら「探検」ができるのか、
ちょっと寂しい気がしないでもないのですが、
それでも、野生動物のいうのは、
とくに海洋動物というのは、
これほどまでに、その生態が知られていないのか…と、
改めて感心してしまった。

データロガーという、
現代科学の粋を集めた器機によって、
見ることのできない動物の行動を、
データとして記録し、
それを解析することによって、
生態を明かにしていく…。

とにかく、著者の素朴な疑問が
新たな発見につながっていくあたりは、
楽しく読める。
続編に期待したい。
理科が苦手な私がスイスイ読めました ★★★★★
自分が使った理科の教科書にどのようなことが書かれていたかは全然覚えていないので、教科書に
あった事柄が正しかったか間違っていたかという考え無しにスーッと入っていけました。
研究したことの論文なのかなと思ったりエッセイ風にまとめている箇所にくっくっと笑ったりして、
あっと言う間に読んでしまいました。
写真のキャプションもほのぼのとして素敵でした。
「母アザラシの撮影した子の遊泳する映像」って、なにも母アザラシが意識して写したけではなく、
母アザラシはカメラを装着されていただけなのですが、いかにも「母さんが撮ったわが子」という
感じがしました。
「真ん中のぐにゃぐにゃは尾の跡」というのは、アデリーペンギンの歩いた跡です。
写真とマッチして、かわいらしさが伝わってきました。
バイオロギング・サイエンスの紹介ですな ★★☆☆☆
 バイオロギング・サイエンスという学問があって、それはこんな学問だよ‾、こんな事してるよ‾って紹介している本です。読みやすいのでさくさく読めますが、得るものといえば、雑学くらいです。
 楽しいので時間つぶしにはなりますが、内容もすぐに忘れてしまいます。別にそれでいいのです。こういうかるい本も必要です。☆2つですけど、楽しめるという点では、☆3.5くらいです。
バイオロギング科学への招待 ★★★★☆
著者の研究歴に沿った水生動物の生態研究成果を紹介しながら、実際のバイオロギング科学とはどんなものなのかを熱く語ったものである。ただし、表題の動物のうちクジラはほとんど登場しない、ペンギンとアザラシ君が主役となっている。
軽妙な語り口の間に、新進気鋭の学徒の熱意が素直に伝わってくる好著である。


文字通り動くことを最大の特徴とする動物の本質を明らかにするためには、本来の生息環境で生き生き振舞っている固体観察が必須だという。しかし、陸上の動物と比べ水生動物では、観察の困難さが災いして100年以上の研究の遅れをとって来た。

ここに登場したのが、バイオロギング科学。
すなわち、データロガーと呼ばれる動物搭載型の各種記録計を装着し、人間の視界や認識限界を超えた水生動物の生態や周辺環境を明らかにして行く分野である。
このバイオロギング科学という新しい研究分野で、近年教科書を書き換えるような新しい知見が次々と明らかになっているという。アザラシやペンギンの新たな生態が知れる

また、この分野では
「事前に立てた研究目的を途中で変更せざるを得ない事態が多発し、とにかくデータを取得し、後にあれこれ眺めているうちに予想外の発見が次々に生まれる」のだという。この点に、仮説検証型の生物学との大きな違いがあり、荒削りだが力強さが感じられ、印象に残る。