患者と医師の共著で、個性的な体験談。
★★★★☆
他人の治療法と術後経過は気になるもので、患者自身の体験は参考になる。有意義な体験記は、本郷美則氏の「前立腺癌 切らずに治した」と、岸谷靖雄氏の「PSA値二十六・五の衝撃」だ。前者はHDRのイリジウム192線源を使ったブラキセラピーの体験記だ(PSAは16)。後者は2003年12月に手術を行い摘出した(PSAは26.5)。本書は米長氏のPSA値がグレーゾーンにあり、ピークで7.54となり、担当医から前立腺全摘徐術を勧められるが、氏は高線量率組織内照射(HDR)を選択し、2008年12月に実施した。米長氏の体験談と、東京女子医大の秋元医師の解説が交互に掲載され、大変具体的である。放射線治療には、外照射と組織内照射があり、組織内照射は更に高線量率(午前中に線源を埋め午後に取去る方法)と低線量率(生涯そのまま残置する方法)がある。米長氏はPSA値が10以下で、グリーソンスコアは6であり、本来は低リスクに分類されるが、生検でガンの範囲が比較的広いことから中リスクと判断、高線量率組織内照射にした由。よって2008年8月に2回ホルモン療法を行い、10月から外部照射を週3回、5週間を行い、PSAを下げてから12月にHDRを実施した。その後もPSA値は極めて良好、尿漏れや性勃起障害はなく、夜も年相応に元気で順調な術後生活の由。本書の特徴は、米長氏の個性からか副作用、特に男性機能についての気懸りが頻繁に異常な程に登場する。またどうしても医師の東京女子医大の宣伝臭がやや気になった。ただ米長氏の言う 「患者が治療法を選択する。患者と医師は対等の関係だ。切除か放射線かは患者が主導権を握って自分が判断し決断する」 ことは適切で同感である。患者自身が前立腺ガンの知識に乏しく、主治医から全摘手術を勧められるがままの患者は、少し時間をもらって多くの治療法の情報収集に走った方が良い。「悔いを残さず、自分で決める」ことが必要だ。