「そうだったのか」学べるニュースの古典
★★★★★
「民俗(習俗)から見た日本人の宗教意識」について、
民俗学、歴史学、宗教学、仏教学、神道学、哲学の知見がバランスよく述べられています。
古代宗教だけでなく、民衆の習俗の基底となっている宗教(意識)にもアプローチしています。
宗教以前的な「死穢・血穢・産穢」などについて、
おぼろげな認識しかったことに気づかされました。
墓とか霊魂についても時代や地域、階層によって異なっていたことを知りました。
また、柳田国男の祖先崇拝説が批判されています。
祖霊が神となるプロセスが論証されていない、と。
さらに、現代の問題としての宗教についての提言もあります。
1968年に刊行された本ですが、復古主義にもマルクス主義にも偏ることなく、
冷静客観的に叙述されていると思いました。
が、当時本書を企画した阿満利麿さんの解説で、
成立過程における熱い思いが伝わってきました。
これからも、長く読まれ続ける本
★★★★★
別の方のレビューで、なぜか酷評?されていますが、これは毎日出版文化賞をとるはずだった作品なのだそうです。結局、受賞を断ったけれど、その経緯は解説にあります。確かに受賞の価値があるなぁと思います。
哲学・仏教と、民俗学・日本文化史をそれぞれ専門とするこの異色の研究者が、当時まだ40代(!)の若さで、ある意味どんくさいほどマジメに問うています。いま彼らと同じ年代の研究者として読んでみると、あらためて、大事にしていきたいと思えるテーマが多いです。
文庫版には、この2人が出会うきっかけを作った元NHKディレクターによる解説がついていて、彼らが生涯で追究してきたテーマが何であったのか、番組制作を通してみえた2人の人となりを、昨日のことのように説明してくれています。またNHKブックスよりずっと写真が鮮明で、その点でも文庫版は「買い」だと思います。
可もあり不可もあり
★★☆☆☆
元々はNHKブックスから出ていたものを学芸文庫から再刊。
どうでもいいが、新書から学術文庫とか最近そんなんばっかだな。
高取正男ならとりあえず「神道の成立」を読んどけばいいと思う。
別にこれは読む必要ない。自分の中では目新しいこともなかったし、
悪い意味で教科書的だと思った。面白くなりそうなテーマなのに何だか退屈だった。
もし存命してたなら聞きたいこと(突っ込みたいこと)が山ほどある。
読んでる最中、そんな風に思った本だった。
これが伝説の名著なら、うちの本棚は伝説の名著だらけだ。