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「スーパー名医」が医療を壊す (祥伝社新書187) (祥伝社新書 187)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 祥伝社
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読み物としては面白いが、本質的な問題を解決せず患者との「分離主義」に至る ★★★☆☆
なぜ日本の医療が増殖する構造的な問題を抱えてそれらを改善できないのか、その理由を象徴的に表している著書である。その意味では多くの医師の本音が素直に出ていると思うし、それ故に病根は根深い。

日本の医学生は欧米と違って経済や政治を学んでくる者が殆どいない。高度の専門性は持っているのだが、医師の社会的役割をより広い視野から見ること、政治や社会の変化が医療に甚大な影響を与えること、最終的に医療の制度設計を決めるのはその国の国民による公益の観点であることを理解してないケースが非常に多い。残念である。

国民はドラマはドラマとして割り切っているし、ドラマに出演する俳優達は医療関係者に後ろ指を指されないよう、必死で演技指導を受け勉強しているのが現実である。そのような健全な認識が薄いのは、一般大衆を見下す無意識の発露を疑わせる。

心ある有権者は、例えば「県立柏原病院の小児科を守る会」等の活動に見るように、医療現場の疲弊に気付いて心を痛めている。医療側はそれを決して忘れず、融和を促し情報を共有するとともに、全体最適を優先し議論する態度を見せて欲しい。(露骨に仲間内を庇ったり、自らの診療科の利害ばかりに固執するから不信の目を向けられるのだ)

医療訴訟で最も問題になっているのは医療側の「情報隠し」であり、医師を敵視しているのではない。
事実、医療事故調査の第三者機関の設置には有権者の殆どが賛成している。

現状の日本の医療はまだ供給側の論理が強く、患者をアビューズ(虐待)する方向に流れやすいとの鋭い指摘を、数年前から李啓充氏が著書で行っている。
『市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗:』李 啓充

この著者にもそうした自らを律する姿勢を望みたいし、そうしなければ一般読者からの信望も得られない。仲間内で快哉を叫ぶだけで終わってしまうであろう。それは敵対を深める分離主義でしかない。
ドラマ愛 ★★★★☆
よくこんなにテレビドラマを見る時間があるな、というのが第一の感想である。著者は市中の研修指定病院の中堅内科医。本来であれば、医師の中でも最も忙しいであろうポジションにいるはずだが、糖尿病代謝内科部長とのことなので、主に緊急性の低い慢性疾患を扱っていて、時間的余裕があるのだろうか。
本書は、白い巨塔、コードブルー、医龍等のテレビドラマをモチーフに、現在の日本医療の問題点を考える、という体裁をとっているのだが、医療問題に関する著者の意見は、多くの医師が医局でブツブツぼやいている内容に近く、共感はできるが、建設的とは言い難い。そもそも筆者には、具体策を声高に述べて、問題解決を図る、といった意図はないようである。
本書の真骨頂はあくまでドラマの解説(ドラマへのつっこみ?)である。先に挙げた作品のみならず、引用されているテレビドラマは数知れず、さらに映画やコミックなどよくぞここまで、というほど引用されている。それぞれに対する解説、批評も詳細、的確、かつウイットに富み、「ドラマにおけるベタ名医の条件」などはあまりに的を射ており、読みながらおもわず笑ってしまった。
筆者のドラマ愛の深さを感じる1冊である。

「医療モノ」にツッコミつつ医療崩壊、倫理を論じる ★★★★☆
関西の医師だから…という訳ではないだろうが、指導医もする現役内科医が、現実にあり得ない医療ドラマ、漫画の設定や場面をユーモアたっぷりにツッコみつつ、医師不足、医療過誤などの医療問題や、技か心か、自己犠牲などの医療倫理の問題について議論を展開させていく。

経歴を見ると、著者は一般向けの著書は初めてのようだが、文章は全く専門臭さを感じさせないこなれたものだ。また、「現役指導医から熱すぎる斎藤君(B・Jによろしく)へメッセージ」なんてウィットに富む記述から、指導医として体験した新研修制度問題の核心を突く指摘へ、淀みなく移っていく。昼はボランティア労働、夜は新人なのに当直バイトという旧制度での過酷な研修医の労働環境を改善しようと改正された新制度は、頼りないながらも戦力にしていた研修医を主治医はおろか点滴もできない、完全なお客さんにすることで、指導医は日常業務と研修医への指導の上、研修医がしていた雑用まで加わり、多忙に拍車がかかった、という。新型インフルの優先接種は、指導医より研修医が先なんていうのを聞くともはや…本末転倒である。医療ものの「ここがおかしい」という時も逐一実際のエピソードを例示し、合理的である理由も添えているので、なぜおかしいのか、納得もしやすい。

最後の方で、「医師性悪説」の代表的な批判について、少し反論をしているが、これだけ面白い文章を書けるなら、現場を知らない医療批判の批判も期待できる。第二弾でもっと、こってりやってほしい。
良く言ってくれました!! ★★★★★
テレビドラマや漫画を題材に話が進み、とても読みやすいです。

また普通は言わないような事をはっきりと言って下さっています。テレビに良く出る医者は現場を知らない人も多いです。この著者は現場をよく分かっています。

激しく共感します!!
医者の本音がここに ★★★★★
 本書のタイトルにはやや誤解を招くところがあり、「患者の「医師は無償の完璧でないと絶対に許さない」という幻想が医療崩壊を招いた、の意味となろう。私自身医師であり、著者(ご本人が述べるようにタレント医者でもその道の権威でもないごく平凡な臨床医である)の意見には非常に共感した。
 著者はドラマや漫画を引き合いにし、患者の医師に対する感情を明らかにしていく。漫画ではゴッドハンドがでるが実はそれは患者の医師に対する期待ではなく、「医師は自分たちのため医師の人生を全て犠牲にして死ね」という残酷な意味合いがある。それが我々本職が医療ドラマをみて共感できない一因だろう。さらに著者は(実はここまではっきりと記載する医師はいそうであまりいない)はっきりと「社会は医師が大嫌いである」と書くが私もそれは現場ではっきりと感じる。私自身僻地で医療に従事したことがあるが、医師は村の名士どころか挨拶しても看護師や教師には無視されるたり一回もあったことのない女性から受診もしていないのに40分以上罵声をあびせられるなど散々な目にあい、へき地医療に対し絶望したものである。
 結語に著者は日本人が「人間はいつか死ぬ、ということが理解されていない」のが問題と結ぶ。実際に患者から「95歳の早すぎる死」と言われたことのある私もその意見には全面的に賛成で、「医療崩壊」(といっても現在のように人類史上国民皆保険をできたことは現代日本とキューバ以外にはないだろう)を改善するにはハードの改善のみならず日本人の心のあり方にも目を向けるべきと著者とともに思うのだ。