背中に白鳥の羽が縫い付けられ、性器にバラが突き刺された少女の死体が発見された。ヨークシャーの新聞記者エディーは、この事件が数年前に端を発する連続殺人の一環ではと疑いはじめる。そして謎の男から被害者の写った写真を渡されたことから、とりつかれたように調査に没頭する…。暴力と陰謀、そして強迫観念で埋め尽くされたこの暗黒の物語は、テンポの良い文章でつづられていて、読者はエディの妄執に引きずられるように、ページを繰らずにはいられなくなる。
本書は1974年から83年にかけての、北イングランドの犯罪と政治と性についての連作となる「ヨークシャー4部作」の第1作である。まさにヨークシャー地方で不幸な少年時代を過ごしたという著者は、心の傷を負わせた張本人(ヨークシャー・リッパーとサッチャー首相とのこと)とその存在を許した時代を暴くことで、時代への復讐を果たそうとしたのか。(工藤 渉)