ただ、惜しいのは後半。ここまでリアルにストリートチルドレンの描写をするのなら、最後までリアルに終わらせて欲しかった。何故いきなりファンタジーになる?そうしなくても捻り様によっては充分面白く出来たと思うのだが。「え?それでいいの?」っていう展開になってしまった。
それでも、この本は面白い。タイトルの「Thief Lord 」が物語りのラストのオチにも使われていて良かった。個人的には好きな本。この続編とかあったらいいのに。
両親を失くした兄弟は、叔母夫婦に引き取られるのですが、叔母が欲しかったのは弟だけのため、兄を寮に入れて弟から引き離そうとします。そしてイタリア・ヴェニスまで逃げてきた兄弟は、廃館になった映画館で、いわゆるストリート・チルドレンと暮らし始め、一方叔母夫婦はベニスの私立探偵に二人の捜索を依頼する――という出だしから打って変わって、最後はファンタジーで終わってしまうラストが、あまり好きになれませんでした。
子供たちのリーダー的存在であるスキピオ少年の生い立ち・秘密や、それに伴う彼の感情の変化、それぞれの子供たちや私立探偵のユニークなキャラクター、舞台設定などは本当に上手く出来ているのに、ファンタジーだからってこれでいいの?と思ってしまうような非現実的な終わり方に、☆マイナス一つ。
けれど逆を言えば、キャラクター作りや舞台の描写は☆五つの出来だと思います。謎の多い、黒い仮面のリーダースキピオ、真面目で過保護だけれど行動力は抜群の兄、天使のように可愛いけれどトラブルメーカーな弟、読書家でお姉さん的存在の女の子、二匹のカメを溺愛している自称名探偵などなど。
そして何と言っても、舞台はイタリア、水の都ヴェニスです。街角や建物の装飾の美しい描写、少年たちが水路をゴンドラに乗って縦横無尽に駆け回る様子は、読んでいるだけでベニスに行った様な気がさせられます。