今年いちばん繰り返し読んだ本
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私は4月から放送されたNHKドラマを観て、 実際の話と知って驚き、すぐに購入しました。 戦争に関係のある本は、いつも少し神妙な気持ちになって読んでいましたが、この本は久枝さんの柔らかい優しい表現で始まって、どんどん読み進みひと晩で全部読み切りました。 特に厳しい寒さの中国東北地方で、養母のフーチンさんの全身からの愛情と、幹さんの子供の頃から、受験や困難を乗り越えて、成長して、母親をいつも大事にされる幹さんの気持ちに、いつも涙がでます。 また、私は当時の中国の時代背景も何も知らなかった事に気がついて、久枝さんも本書の中で書いておられた「ワイルドスワン」も合わせて読みました。 幹さんが、必死の思いで、日本に帰るのにどれだけ努力をされたか、私の想像だけではぜんぜん足りないかも知れません。 けれども、この本を読んで、私はいつか自分も母親になったらこうありたいと思った事。幹さんのように、今の日本から想像できないような時代を生き抜いた人々がいた事。 それから、優しい中国の人達の事を忘れないようにしていきたいと本当に思いました。 本当に読んで良かったです。書いてくださってありがとうございました。
日本と中国の家族を見つめる旅
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【あの戦争から遠く離れて】日本と中国の家族を見つめる旅
団塊ジュニアといわれる世代、日本人として日本で育った私にとって、戦争といえば、「第二次世界大戦」「広島・長崎の原爆」のこと。
しかし、社会科の教科書に掲載されていた白黒の写真や、アニメ映画「ほたるの墓」から得たイメージしかない。
その時代を生きた祖父母から話を聞いても、どこか遠い昔話を聞いているような気がしていた。
戦争について書かれた本はたくさんあるが、手に取る前に、悲惨さ、暗さ、重さを感じ取ってしまって、積極的に「読もう」という意欲が沸くものではなかった。
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「あの戦争から遠く離れて」についても、最初は、そうした「戦争もの」という先入観をもっていた。
しかし、読み始めると、ページをめくる手が止まらなくなった。
この本の軸にあるのは「家族」だからだ。
この本は、著者の城戸久枝さんが、中国残留孤児である父親・城戸幹さんの半生をたどったルポである。
父親の過去についてだけではなく、久枝さん自身が2年間の中国留学生活で体験したこと、幹さんを育てた養母やその親族との交流から感じたことも綴っている。
久枝さんが1976年生まれだと知り、また、本書に目を通す中で、私自身と同じ世代だという意識が強くなった。そのため、幹さんを私自身の父親と重ねて想像することも多かった。
幹さんの中国と日本の家族に対する思いや、久枝さんの父に対する思いを感じて、胸が熱くなった。
本書では、戦争や戦後の中国で残留孤児が体験した苦労についても触れているが、戦争の悲惨さよりも、人と人のつながりの価値や、人の「縁」が人生に大きな影響を与えるものであるということを感じる。
幹さんの娘である久枝さんだからこそ、中国に対して一定の距離感を保ちつつ、しかし、一方で、「他人事ではない」という親近感も持ちながら、あの戦争から現在につながる1人の孤児の半生を記述できたのではないだろうか。
この本を書くことは、父親の半生を掘り起こして記録することであるとともに、久枝さんにとっては自身のルーツをたどる取り組みだったのだろう。
「あの戦争」は、遠い過去のものになりつつある。しかし、それは決してなくなるものではなく、あの戦争があった時代を生き抜いた人がいたからこそ、今の自分があるのだということを再認識させられる。
綿密な取材に基づくノンフィクション 若い著者の情熱に敬意
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中国残留孤児の父親の足跡をたどった娘により書かれたノンフィクション。
帰国するまでの父上の苦労と努力、そして人間関係を、綿密な取材に基づいて書いている。
戦争を知らない若い著者が、これだけの大作を書き上げるのに注がれた情熱に敬意を表したい。
著者は父親の影響もあって中国に留学する。
友人も出来るが、普段仲良く話をしていても、過去の日本との戦争の話になると、一度火がついたらとまらない攻撃的な中国人に苦しめられる。
日本と中国との間で、父が感じたであろう複雑な心境のほんの一部であるが、自ら感じることになってしまう。
戦後60年以上経ってもなお、これほど溝が深いかと、読んでいる私も深く考えさせられる。
一方で父の養母の家族達との交流など、心温まるエピソードも多い。
国家と国家、日本人と中国人という考え方ではなく、人と人として交流を進め、お互いを理解し、いかに心の垣根を取り払うかが大切な気がする。
近年残留孤児の話題がニュースになることも少なくなった。
だが、同じような残留孤児の苦難のエピソードは、孤児の数だけあると考えなければならない。もちろん戦争の犠牲者は残留孤児だけにとどまらない。沖縄、広島、長崎、東京・・・。活字にならないだけで、それぞれの戦争経験者の数だけ苦難のエピソードがあるのだろう。
平和について、今一度考えるきっかけとなる1冊。
戦争を語り継ぐ新世代の筆力・執念に敬服
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世の中にはこれによく似た経験をした人がもっともっといるはずですが、この本の著者のように執拗に追究して、理路整然と書き残すことはなかなかできないと思います。
残留孤児になって、助けてもらった一部始終を子どもの立場で突き止めようとしたところに心惹かれます。残留孤児自身が自己体験をしるしたのではなく、親の体験をこのように自分のこととして書き残そうとした熱意、そのひたすらさに感動するのです。時代が子や孫の代になって、戦争の痛手が薄れようとする平成20年代になっている現在、本書のような誠実な作家が誕生したことは何にもまして心強いことです。
孫玉福の壮絶な中国での体験に感動!!
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実際に在った話だけに、又その娘さんが書いただけに状況が手に取るようにわかり、加えてNHKのドラマ「遥かなる絆」で忠実に再現されたので、孫玉福としての城戸幹さんの中国での苦労に満ちた生活に、ただただ感動!!でした。