バトラーの、1999年から2004年のジェンダー/セクシュアリティに関する論文集。あの『ジェンダー・トラブル』の続編、と言っていいと思う。
『ジェンダー・トラブル』で「女というアイデンティティを基礎としない」フェミニズムの可能性を提示した著者が、トランスジェンダー、トランスセクシュアリティ、インターセックスなどに関する現在の政治的状況について考察している。ジェンダーはもはやフェミニズムだけに関わる問題ではない。
キーワードは、「規範の変換」。なぜ規範を変換する必要があるのか？いかに変換するのか？　バトラーは本書でそれらを人間の生存の問題として捉えることによって、より積極的にこたえていく。そこには、誰が人間とみなされ誰がそうみなされないかを決める規範は可変的だ、という「ヘーゲルのフーコー的転換」がみられる。
また、本書の第9章は、『ジェンダー・トラブル』の再考となっている。
これらの点から、本書もまた、ジェンダー/セクシュアリティに関する理論的、政治的、そして倫理的考察に欠かせない一冊となるだろう。