「古事記」をめぐる雑学である。特に言葉の持つ意味、あるいは風景、力に及んだ叙述に魅力がある。古事記は、日本書紀のような完全漢文で官制の立場に完全に立ったような文章ではなく、変体漢文体で綴られ、生活の言葉がここかしこに溢れる魅力ある文学なのだ。
「天」(あめ)と「空」(そら)を古事記はどのように使い分けていたのか。
「原」は現代におけるそれとどう違うのか。
「黄泉」と「常世」の境界はどこにあるのか。
創世神話の中の自然観察、そして性の描写、等々。
学者の眼と詩人の眼を併せ持った文章に出逢い、私も遠い古代の国々に遊んだような心地もちをした。