タバコやアルコールなどの依存性物質に
政府が課税することをやめられないという、
依存性物質への課税への依存という図式が
語られているのは興味深いです。
作者は、西暦1500年以降のドラッグの広がりを
サイコアクティブ革命と名づけ、
商人・植民地支配者・官僚たちがいかにして
サイコアクティブ資源の集約に成功したか、(8割はこっち)
次に近年の反ドラッグ運動を
サイコアクティブ反革命と名づけ、
商人・官僚たちがなぜ売上・税収を捨ててまで
ドラッグの制限・禁止に至るようになったか
を述べています(残り2割)。
著者の考えによれば、サイコアクティブ反革命は
これまでのところ、およそでたらめだ、ということです。
著者なりに解決策を提示するが、
悲観的なコメントで終わっています。
本書によれば、砂糖が世界に普及する過程も、
ドラッグのそれと類似しているそうです。
砂糖なら、岩波ジュニア新書の
「砂糖の世界史」もお薦めです。
タイトルで「ドラッグ」と謳っているので麻薬・覚醒剤(私たちの日常からは遠い話)を連想されるかもしれませんが、本書が主に取り上げているのは、お酒・タバコ・コーヒー/茶です。けっして私たちと縁がない世界の話ではない。読まれた方は、向精神物質・依存性物質が私たちの日常とどれほど深くコミットしているか、に驚くことでしょう。そして、依存症のコントロールがいかに難しいか知れば、現代世界が直面した問題をリアルに感じられるはずです。
映画「レオン」のゲイリー・オールドマン(麻薬取締官役)はなぜ自ら薬をやっていたのか、「トラフィック」のマイケル・ダグラスの真の敵は何だったのか。本書を読んでるとこういうことにも思いが至ります。“世界”を理解する一助になる貴重な一冊。おもしろいですよ。
あと「キンマ」って台湾でいう檳榔(びんろう・ビンラン)のことですよね。ふつうにドラッグに興味がある人の期待にも応えてくれますよ、本書は。