人種差別は、表面的にはかなり薄れてきた。だが性差別はいぜんとして残っているばかりでなく、アジア・アフリカ・イスラム諸国などでは、女性の人権が蹂躙されているというより、ほとんど認めてもらえない地域が少なくない。性の奴隷や人身売買も、何千万人という数にのぼるようだ。この本は、悲惨ですさまじい現実を世界的にルポした衝撃の書。著者のニコラス・クリストフとシェリル・ウーダンはジャーナリストの夫婦で、ともにピュリツアー賞を受けている。二人は「ニューヨーク・タイムズ」など影響力のあるメディアに記事を発表しているため、この本は発売直後にベストセラーの仲間入りをした。この本の強みは、現地取材で多くの体験談を聞き、写真も撮って掲載している点にある。机上の論理ではないだけでに、説得力もあり、「では私たちに何ができるか」の具体的な提案もおこなっている。同じ時代に生きる人類の一員として、「関係ないや」と見過ごしていられない印象を持つ。タイトルの「空の半分」は、中国の古いことわざ「空（世界）の半分は女性が支えている」に由来し（共著者のシェリルは、中国系アメリカ人）、毛沢東の語録に加えられて有名になった。